『灰色の運命』

□第8話 決意の翼
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カタロン基地


シン「マユ!」
マユ「お兄ちゃん!」
シン「ハァ…、良かった。無事だったか。」
マユ「お兄ちゃん、外は一体どうなっているの?」
シン「いや…、外は…。」

シンは目線を逸らして言った。

シン「兎に角、子供達をシェルターから出さないで下さい。」
「はい。」
シン「またな、マユ。」
マユ「…うん…。」

シンはシェルターから出た。

マユ「………」

だが、マユの決意を込めた表情に気付く者は誰もいなかった。

シン「…ん?」

シンは通路の向こうにティエリアに連れられている沙慈を見付けた。

シン「ティエリア? 沙慈? どうしたんだ?」

シンはティエリア達の後を追った。

シン「………………」

シンは通路の影に隠れてティエリア達の話を盗み聞きする事にした。

シン「……えっ!?」

だが、沙慈が話した内容は、シンを驚愕させるには十分すぎた。
沙慈が話した内容とは、連邦軍にカタロンの情報を話したらそれがアロウズに流されたという事だった。
そして自分は連邦軍の人間に逃がしてもらったという事だった。

シン「(それじゃ…あれは、まさ…か…!?)」

シンはあのアロウズによる攻撃の一端に沙慈が関わっていた事にただただ驚くしかなかった。
パチンッ!

シン「!」

シンは何かをはたく音がしたため、思わず通路の影から出たら、ティエリアが沙慈をはたいていた。

シン「ティエリア…。」
ティエリア「なんという…なんという愚かなことを。」

ティエリアは一瞬視線をシンの方に向けたが、直ぐ様沙慈を見た。

沙慈「こんなことになるなんて 思ってなかった。僕は、戦いから離れたかっただけで…こんなことに…そんな…僕…」
ティエリア「彼らの命を奪ったのは君だ。」
沙慈「はっ!」
ティエリア「君の愚かな振る舞いだ。自分は違う、自分には関係ない、違う世界の出来事だ。そういう現実から目を背ける行為が、無自覚な悪意となり、このような結果を招く。」
沙慈「僕は…そんなつもりじゃ…ああっ!」

沙慈はその場に座り込んで泣き伏せた。

シン「沙慈…。」

シンも沙慈と似たような峡中だった。
戦争など対岸の火事と思っていた、中立国オーブでの生活。
だが、それが連合軍によるオーブ侵攻によって全てが崩れ去った。
そして、ザフトに入ってからの戦いの日々。

シン「…ククッ。」
ティエリア「シン? どうした?」
シン「いや、俺も沙慈と似たような感じだったからな。それがどうだ、戦争に巻き込まれて、そして軍人になった。そういう自分を笑っただけだ。」

そこへ刹那が来た。

刹那「ティエリア。」
ティエリア「刹那。」
刹那「どういうことだ? あれは。」
ティエリア「アロウズの仕業だ。そしてその原因は彼にある。」

ティエリアは泣いている沙慈を見やる。

刹那「沙慈・クロスロード。」
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