『対話の前の日々』

□変革者と最強の超兵
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中央アジア


ブロロロロロ……!

龍義「クソッ! 何で引っ掛かるんだよ!」

車は片輪を泥濘に嵌まって出られなくなっていた。

龍義「ミユ、合図をしたらアクセルを全開まで踏んでくれ。」
ミユ「うん、分かった。」

龍義は車から出て、車の後ろに立った。

龍義「行くぞ。」
ミユ「うん。」

龍義は車を押し、ミユはアクセルを全開にした。

ギュルルルルルル…!

だが、車は泥濘に嵌まったままだった。

龍義「くっ…! ダメか…!」
ミユ「どうするの…? 此処携帯も繋がらないし…しかもそろそろ日が沈むし……」
龍義「最悪此処で1泊してから町まで歩くしか……」
「手伝いましょうか?」
龍義「ん…?」

龍義は声のする方を向いた。

龍義「…ハッ、お前達は……」
「えっ? あなたは…?」
「飛鳥大尉…?」
龍義「ピーリスに…確かアレルヤとか言ってたな。」

龍義達に声を掛けてきたのは、巡礼の旅に出てたアレルヤとマリーだった。


─────────


パチパチ…

アレルヤとマリーのお陰で車は泥濘から抜け出したが、日が沈んだ為、龍義とミユはアレルヤ達と一緒に近くの湖に1泊する事になった。

龍義「…巡礼の旅、か。」
マリー「そう言えば、大尉はどうして此処に?」
龍義「いや、ただ3年間の休暇を貰ってコイツと一緒に気儘な旅の途中だ。」

龍義はそう言ってミユの頭をポンポンと叩いた。

マリー「そうだったの。」
龍義「まあ、休暇が終わったら終わったで、『あの男』に振り回されるのは確定しているものだけどな。……ところで、髪切ったのか? 少し短い気がするのだが」
マリー「え? これは寧ろ伸ばしたのよ。」
龍義「……『覚悟』か?」

マリーは龍義の言葉に驚きを見せたが、直ぐに頷いた。

ミユ「…?」

只、ミユには何の事かさっぱり分からなかった。

龍義「そうか……で、アレルヤは……彼処か。」

龍義は湖の畔に佇むアレルヤを見付けた。

龍義「……少しアレルヤと話してくる。」

龍義はそう言って立ち上がり、アレルヤの所に歩いて行った。

マリー「…………」

マリーは少し悲しそうな表情で龍義を見た。

龍義「アレルヤ・ハプティズム。」
アレルヤ「うん? 何だい……?!」

アレルヤは龍義を見て、驚愕した。
それは龍義の『金色に輝く瞳』と『脳量子波』に。

龍義「…その様子だと、俺がどんな人間か判っている様だな。」
アレルヤ「…そんな気はしてたんだ。でも、実際にそうされると驚くよ…」
龍義「そうか。」
アレルヤ「……イノベイター……」
龍義「イノベイター…、そう言えば休暇に入る前に検査を受けて、そう言われたな。」
アレルヤ「そうなのか。」
龍義「そう言えば『もう1人』にも検査をする予定だって聞いた事はあるな。名前は聞いてないが。」
アレルヤ「って事は、軍にイノベイターは2人いるって事になるのかい?」
龍義「恐らくそうだろうな。…で、イノベイターとは何なんだ?」
アレルヤ「ああ、イノベイターと言うのは、イオリア・シュヘンベルグが提唱した新人類の事だよ。」
龍義「…新人類…」
アレルヤ「そう。イノベイターは強力な脳量子波によって『異種との対話』を可能にするらしい。」
龍義「異種との対話か…イオリアも面白い事を思い付く。だが、今、俺がイノベイターであるという事は、『異種』の存在も強ち無いとは言い切れないな。」
アレルヤ「…そうだね。」
龍義「……アレルヤ・ハプティズム、お前にこれをやろう。」

龍義はそう言って『2本のメモリースティック』をアレルヤに手渡した。

アレルヤ「メモリースティック? なんだい、これは?」
龍義「俺はかつて『フォーリンエンジェルス』にジンクスのパイロットとして参加した事がある。」
アレルヤ「…えっ?」
龍義「そして俺は、その戦いの中で『ある男の死』を目撃し、そして、ある『1隻の船のブリッジを破壊し、其処にいた2人の男女の命を奪った』」。
アレルヤ「そ…それってまさか…?」
龍義「もう気付いている筈だ。俺はCBの母艦のブリッジを破壊し、2人の命を奪った、敵だ。」
アレルヤ「…………」

アレルヤは何も言えずにただただ龍義を見た。

龍義「だが、CBは最初から滅びる定めであり、テロリストである事にはかわりないだろ?」
アレルヤ「…………」

アレルヤは龍義から手渡された2本のメモリースティックを見つめた。

龍義「……彼女の言葉は俺に『変革の意味』を教えてくれた。」
アレルヤ「あ……」
龍義「そして俺はその言葉に従い、CBが存在しなくてもいい世界を作り出す為に新たな戦いを始めたが、その矢先にアロウズに所属されたのは痛かったな。だが、ピラー崩壊後の混乱を利用してカティ・マネキンらと共にアロウズから逃げ、そして、アロウズを叩く為にスペルビアジンクスに乗り、CBとカタロンと共に戦った。その最中にあのGN粒子によって、俺はイノベイターになったという事だ。」
アレルヤ「…トランザムバースト。」
龍義「トランザムバースト…その時のGN粒子によって俺はイノベイターにか…フッ、皮肉なものだな。CBの船を落とした男がイオリア・シュヘンベルグが提唱する新人類、イノベイターになるとはな…」

龍義はそう言って湖の向こうを見つめた。

龍義「ひょっとすると、イオリアが望むイノベイターというのは『自らの変革を受け入れた』者にしかなれないのかもしれないし、もしかしたら何らかの因子を持つ者がなれるのかもな。」
アレルヤ「…………」
龍義「ああ、そのメモリースティックは船に帰ってからじっくりと見る事だな。」
アレルヤ「…ああ、分かってるよ。」

アレルヤはメモリースティックを握り締めた。
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