『灰色の運命』2

□第32話 レイ
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第32話 レイ


シン「…やっぱり…か…」
スメラギ「………」

スメラギは静かに頷いた。
シンとスメラギは医務室にいた。

シン「…『擬似GN粒子による、細胞障害』、そして、『テロメアの異常な短さ』か…。まさかレイがクローンだったなんて…」
スメラギ「知らなかったの?」

シンは頷いた。

シン「多分知ってたのは、ギルバート・デュランダル議長だけだと思う……ああ、そういえば議長は元々は遺伝子の科学者で、DNA解析の権威だったな…」
スメラギ「そういう人が議長に…」
シン「コーディネーターは遺伝子操作で生まれた存在ですから。ま、政治家としての手腕が無きゃ無理ですけどね。」

『コーディネーターは…』の所でシンは皮肉っぽく言った。

シン「…細胞障害の事は後で俺が言っときます。」
スメラギ「そう、分かったわ。」

スメラギは医務室から出て、ブリッジに向かい、シンは医務室の医療カプセルから目覚めたレイに話をした。

レイ「何…?」

レイはシンの話に目を丸くした。

シン「レイ、悪いけどこれは嘘じゃないんだ。」
レイ「ッ…」

レイはシンの悲しそうだが真剣な表情に嘘偽りは無いと感じた。

シン「これを見てくれ。」

シンは小型端末から旧式のGNドライヴ[Τ]の情報を出してそれを見せた。

レイ「…細胞障害…?」
シン「そうだ。『緋色』の粒子ビームじゃなくて『真紅』の粒子ビームなら、その毒性はある。」
レイ「…確かに、あの時のフリーダムは紅い粒子を出してて、紅いビームを撃っていた。」
シン「…此処で治療を行わないと死ぬぞ? 只でさえ短い命が更に削られる事になる。」
レイ「?! まさか俺がクローンだと…?」
シン「ああ、お前の細胞障害を調べていたらテロメアが常人より短いという事が分かったからな。」
レイ「…そうか…」
シン「…せめて、誰のクローンなのかぐらいは知りたい。教えてくれないか?」
レイ「………」

レイは顔を俯せ、そして直ぐに顔を上げた。

レイ「アル・ダ・フラガという男だ。」
シン「アル・ダ・フラガ? それがお前の…」
レイ「そして、俺『達』を造り出したのは『ユーレン・ヒビキ』という男だ。」
シン「…!? ちょっと待て。…『達』ってなんだよ…? お前以外にもいるのか?」
レイ「少なくとも、俺以外にも『二人』はいる。」
シン「ッ…!」
レイ「一人は殆ど知らないが、どうやら死んだという情報は入っている。後一人は俺もよく知っている人物だった。」
シン「…その人は…?」
レイ「『ラウ・ル・クルーゼ』だ。」
シン「ラウ・ル・クルーゼ…?」
レイ「ラウと俺はギルが処方した薬で命を繋いでいたが、ラウは自らの運命に絶望し、憎み、この世界を破壊しようと画策した。」
シン「…ッ!」
レイ「そして、世界はラウの思い描く破滅へ、後少しの所まで向かっていた。」
シン「………」

シンはただ黙ってレイの話を聞くしかなかった。

レイ「だが、世界は後一歩の所で破滅から逃れ、ラウはフリーダム…『キラ・ヤマト』によって撃たれた。」
シン「…えっ?」

シンはレイがフリーダムのパイロットの名前を言った事に驚いた。

シン「…何でレイがフリーダムのパイロットの名前を…?」
レイ「ユーレン・ヒビキがアル・ダ・フラガのクローン…俺達を造り出したと言ったな。だが、ユーレン・ヒビキは『ある計画』の為にアル・ダ・フラガを利用したに過ぎない。」
シン「な…に…?!」
レイ「その『ある計画』とは、『スーパーコーディネーター計画』だ。」
シン「スーパーコーディネーター計画…?」
レイ「スーパーコーディネーター計画とは、例えば青い瞳になるよう塩基配列をデザインしたのに青い瞳にならず、金髪になるようデザインしたのに金髪にならない等だ。ユーレン・ヒビキはこれを人間の母体の不安定さが原因だとし、思い通りのデザインが出来る様に『人工子宮』を造り出した。それが何時しか『最高のコーディネーター』、即ちスーパーコーディネーターを造り出す為に人工子宮が使われ、数多の失敗の末に、『スーパーコーディネーター、キラ・ヤマト』が誕生したのだ。」
シン「……………」

シンは唖然とした表情でレイの話を聞いていた。

シン「…でも、そのキラとレイ達は何の関係が…?」
レイ「ユーレン・ヒビキはスーパーコーディネーターを造り出す為の資金巡りをしていた時にアル・ダ・フラガに会い、アル・ダ・フラガのクローンであるラウを造り出し、その際に得た資金でスーパーコーディネーター、キラ・ヤマトを造り出した。」
シン「…そんな事が…」
レイ「だが、それが事実で、現実だ。」

レイのこの言葉を最後に、医務室は沈黙に包まれた。

シン「……………」
レイ「……………」

どれだけの時間が過ぎたのだろう。
数分かもしれない、或いは十数分かもしれない、或いは数十分かもしれない、或いは数時間かもしれない。
そんな空気が医務室に流れた。

ピピッ

そんな空気を通信の音が切り裂いた。

シン「…どうしたんだ?」
フェルト『プラントのギルバート・デュランダル議長が声明を出しました。』
シン「議長が?」
レイ「そうか…ギルは遂に『あれ』を…」
シン「『あれ』?」
レイ「それをギルが話す。」
シン「…其処に予備の赤服があるから着替えてブリッジに行こう。」
レイ「分かった。」

レイは医療カプセルに入る時の服からザフトの赤服に着替え、シンと共にブリッジに向かった。
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