『未来を斬り拓く対話と運命の翼』

□第2話 イノベイターとガデラーザとエウロパと……
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木星


『木星有人探査船エウロパ』。
今から凡そ130年前、その船は『木星有人探査』の名目として大いなる宇宙(そら)へ旅立った。
だが、その真の目的は『オリジナルGNドライヴの製造』であり、木星に到着後、高度な偽装工作によって公には『エウロパは事故で破壊された』と報じられた。
だが、実際にはエウロパは破壊されておらず、真の目的であるオリジナルGNドライヴの製造に着手した。
エウロパの乗員は全て真の目的の為に集まった者達であり、地球での出来事を笑い話にオリジナルGNドライヴの製造に精を出した。
そして20年後、彼等は6基のオリジナルGNドライヴを完成させ、その内の5基を予定通り地球にいる同胞達に向けて放った。
因みに、オリジナルGNドライヴを載せたシャトルを操縦していたのはある一人のイノベイドによって製作したハロであり、このハロの存在によってCBは少ない人数で効率よく運用する事が出来た。
歓喜に湧く彼等だったが、その陰で『ある任務』を帯びた者がいた。
その者はエウロパの乗員全員を抹殺し、更にエウロパを爆破し、自らの命と引き換えにオリジナルGNドライヴの情報を抹消した。
その者にとって誤算だったのは、爆発に耐えた紫色のハロの存在と、数十年後、イオリア計画の乗っ取りを画策していたコーナー家の密命によって其処に足を踏み入れ、その紫色のハロを持ち去った者達の存在と、配線ミスによって『つい最近まで』射出されなかったもう1つのオリジナルGNドライヴだったが、もう1つのオリジナルGNドライヴは紫色のハロを持ち去った者達に見付かる事なく更に数十年後の時を経てやっとCBの元に送り届けられたのは不幸中の幸いだろう。
そして爆破されたエウロパは、かつて偽装工作によって製作された写真と酷似した状態で、木星の衛星軌道上を漂っている。
それから1世紀以上もの時が経ち、地球ではGN粒子の発見とそれを半永久的に製造するオリジナルGNドライヴの基礎理論を作り出したイオリア・シュヘンベルグの提唱によって3本の軌道エレベーターと巨大な太陽光発電システムが建造され、それに伴う3つの超大国の設立、複数の大規模な紛争、イオリアによって組織化し、彼等が命と引き換えに製造したオリジナルGNドライヴを搭載する最強の機動兵器ガンダムを所有する私設武装組織ソレスタルビーイングの出現と一部のイノベイドによる暗躍とその阻止、更にはイオリアも予測不可能な『異世界の人間』と『異世界での戦い』。
これ等の出来事が起き、混迷する時代の中で誰もエウロパ、引いては木星有人探査の事など、全く気にも留めず、エウロパもまた、木星の衛星軌道上をただただ漂っているだけだった。
このままエウロパは誰の目にも留めず、漆黒の世界の中で永久に漂い続ける『筈だった』。
だが、その時は訪れた。
木星の大赤斑という超巨大な台風から現れ、木星の超重力をものともせずに突き抜けた『金属の塊』によって。
その金属の塊はエウロパに衝突したかと思えば、なんとその身をエウロパに沈め、エウロパは『命を吹き込まれた』かの様に動き始めたのだ。
ケーブルに電気が走り、モニターやランプに次々と光が付いた。
更にはその船体が『元の状態に戻った』のだ。
そして、エウロパ内部を漂う浅緑の髪の青年の死体が『動き始めた』。
こうしてエウロパは『木星からの使者』によって生まれ故郷である地球に向かい始めた。
そしてそれは人類が未だに体験した事の無い『大事件』へと発展してゆく……
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