『未来を斬り拓く対話と運命の翼』

□第3話 木星からの使者
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軌道エレベーター

連邦軍基地格納庫


グラハム「フゥ……」

グラハムは現在、連邦軍が次期主力候補として開発が進められているGNX-Y903VS、『ブレイヴ』、その指揮官用として開発されているダブルドライヴ搭載のGNX-903VW、『ブレイヴ指揮官用試験機』の試験飛行を終え、コクピットから出て、携帯端末を手に、ブレイヴの開発主任で盟友でもあるビリー・カタギリと連絡を取った。

ビリー「試験飛行は上手くいってる様だね。」
グラハム「ああ、残りの機体もそろそろロールアウトする様だが?」
ビリー「うん、そう、残りの機体も今月中にロールアウトする予定だよ。」

ビリーは整備中のブレイヴを窓越しで眺めながらそう言った。

グラハム「そうか。…なら、『ひとつ聞きたい事がある』。」
ビリー「なんだい?」
グラハム「『落下した探査船の破片の事』だ。」
ビリー「え? 落下した探査船の破片?」

ビリーはグラハムの言葉に驚きの表情をした。

ビリー「確かに、あの状況で燃え尽きないのは不思議に思ったけど、どうして、君がその事に興味を…?」
グラハム「マネキン准将が調査命令を出したと耳にした。」
ビリー「耳が早いね。そうなんだよ。君も聞いてる通り、その命令が僕に届いて宇宙局の技術研究所に出向する事になったんだ。ブレイヴの最終調整に付き合えないのは残念だけど、他の技術者達でも十分に出来ると思うし。探査船の破片については、何か分かったら連絡するよ。」
グラハム「頼れる友だ。」
ビリー「いえいえ。」
グラハム「…ああ、そう言えば『あの事』についてだが……」

グラハムは横目で格納庫の隅を見た。
其処にはMS形態のまま整備を受けているブレイヴがいた。
そのブレイヴは、機体が黒く、頭部、サイドバインダーとアーム、GNビームライフル『ドレイクハウリング』のみは指揮官用試験機と共用なのか青のままである。
この謎のブレイヴは、グラハムが言った『あの事』と関係がある様ではある。

ビリー「ああ、その事だけど、無事に通ったよ。」
グラハム「そうか。」
ビリー「君が提唱した、『イノベイター専用ブレイヴによる特殊部隊の編成』、その隊長になる『彼』には言わないのかい?」
グラハム「ああ、その事だが、時が来たら全て私が直接言うと言ってあるから問題は無い。」
ビリー「(君が色んな意味で一番問題なんだけどなあ……)」

ビリーは苦笑しつつ、そう思った。
あの黒と青のブレイヴは、GNX-904VI、『ブレイヴイノベイター評価試験機』であり、その機体にはブレイヴによるイノベイターの評価試験の為に3基のGNドライヴ[Τ]を搭載しており、今から1年後に連邦軍に復帰する『ある者』の乗機となり、『イノベイター専用ブレイヴ』の糧となる事が予め決められている。

グラハム「まあいい、それが聞けて結構だ。失礼する。」

そう言ってグラハムは通信を切った。

ビリー「(しかし…宇宙局の技術研究所か……『彼女』はいるだろうな……)」

ビリーは其処にいるであろう、優秀だがビリーに対する愛情をストレートに出す若き女性科学者の事を思い出した。
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