『未来を斬り拓く対話と運命の翼』

□第4話 復活の時
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荒野


其処には1台の乗用車が走っていた。
龍義とミユが乗っている車であった。
これまでの龍義達の経緯というと、中国、ロシア経由でヨーロッパに向かい、其処で暫く回り、今度はアジア南部に向かい、アジア中央で映画を観る為に飛行機を使い、再びアジア中央に戻って来た。
この後は、東南アジアからオーストラリアに向かい、更にアフリカ、南アメリカに向かう予定であった。

龍義「……?」

龍義は先程から後ろを走る乗用車が気になっていた。

龍義「……ミユ、後ろの車をこれで見てくれないか?」

そう言って龍義はミユに望遠鏡を渡した。

ミユ「えっ…? う、うん。」

ミユは龍義が言っている事がよく分からなかったが、望遠鏡で後ろを走る乗用車を見た。

ミユ「………ヒッ!!?」

ミユは乗用車を見て、息を詰まらせた。

龍義「…どうした?!」

龍義はミユの表情と脳量子波でその乗用車が異常な事になっているのは分かった。

ミユ「うう後ろの車…だ、だだ誰も…の、のののの『乗ってないよ』?!」
龍義「誰もか?」
ミユ「う…ううううん!! 」

ミユはまるで恐ろしいものを見た表情と声をしていた。

龍義「…ッ!」

龍義はアクセルを全開にした。
すると、後ろを走っていた『無人の』乗用車も龍義の車の後を追い始めた。

ミユ「龍兄!!」
龍義「分かってる!」

こうして、『相手』の目的が分からないカーチェイスが始まったが、そのカーチェイスを『見ている者』がいた。

「…あん? 何だ? ありゃ?……はっ、まあ、この俺様にはなんもカンケーねぇな。俺様が興味あんのは『アレ』だけだぜ。」

見ている者がいるという事を知らずにカーチェイスは続いた。

龍義「…ハッ、そう言えば…!」

龍義はある事を思い出した。
それは、出発した町を訪れた際、町人が昔、この町の近くで連邦軍の基地があり、新政権の軍縮によって放棄されたという話を思い出したのだ。

龍義「…ッ!」

龍義はその連邦軍基地に向かう事にした。

ピピッ!

龍義「!」

龍義の軍の携帯が鳴った。

龍義「ミユ、其処の携帯に出てくれ。」
ミユ「わ…分かった。」

ミユは軍の携帯に出た。

ミユ「はい。」
『えっと…? 君は…?』
ミユ「玲ミユです。」
『玲…ミユ…? あ、ああ。そうか、あの時の……』
ミユ「えっと…あなたは…?」
『ああ、僕はビリー・カタギリ。龍義はいるかい?』
龍義「耳に当ててくれ。」
ミユ「うん。」

ミユは軍の携帯を龍義の耳に当てた。

龍義「飛鳥龍義だ。」
ビリー『ああ、実は君に言いたい事が……』
龍義「…『無人の車』が襲ってくるから注意しろと?」
ビリー『…えっ? 何でそれを?』
龍義「『既に手遅れだからだ』。」
ビリー『なっ?!』
龍義「だが、この近くに放棄された連邦軍基地があるという話を聞いた。其処で対処する。」
ビリー『…分かった。でも、無茶はしないでくれ。』
龍義「ああ、そのつもりは毛頭無い。」
ビリー『兎に角、この電話は繋いだままにしとこう。』
龍義「ああ。…………! あれだ!」

龍義は放棄された連邦軍基地を見付けた。

ビリー『その基地のコンピューターが生きてたら、救難信号を出して、待機してくれ。救援を送るから。』
龍義「すまない。」
ビリー『なに、このくらいならもん…ジジッ…ないよ…ジジッ…』
龍義「…!」

ビリーとの電話に突如『ノイズ』が走った。

ビリー『なん…ジジッ…うにで…ジジッ…が……ジジッ…』
龍義「ビリー・カタギリ? 俺の声が聞こえるか?」
ビリー『ノイ…ジジッ…どくて…ジジッ…えない…ジジッ…』
龍義「(何だ…? 基地に近付くにつれて…ノイズが酷くなって…)……ッ?!」

龍義は急にハンドルを切った。
その瞬間───

ドガァァァンッッ!!!

ミユ「キャッ?!」
龍義「チッ…! やはりそう言う事か!!」

龍義の車がいた所が突如爆発したが、龍義は『しっかりとその爆発の原因を目で捉えていた』。
それは、『廃棄された筈の連邦軍基地から放たれたロケットランチャーであった』。

龍義「だが…!」

これしか方法が無いと思った龍義は、連邦軍基地を取り囲む高い壁に接近し、壁に沿う様に車を走らせた。

龍義「………ミユ!」
ミユ「えっ……わっ?!」

龍義は壁に扉がある事を確認した途端、右腕でミユを抱え、車を走らせたまま、車から飛び降り、その扉を開けて連邦軍基地に入った。

龍義「…………」
ミユ「……暗いね。」

壁は高いだけでなく、分厚く、狭い通路の10m位先に扉があったが、龍義はその途中にある、下への階段が気になっていた。

龍義「……行くぞ。」

龍義はミユを抱えたまま、左手には拳銃を持ち、その階段に向かった。

キィィィィィィィ……

龍義「ッ!」

龍義は『脳量子波の波動を感じ』、後ろの入ってきた扉を見た。

龍義「ハッ!」
ミユ「えっ?!」

2人は扉を見て、驚愕した。
扉から『液状化した金属が漏れ出ているのだ』。

龍義「…チッ、行くぞ!」

龍義は走って階段を駆け降りた。

龍義「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……」

階段の先の通路も先程の通路よりも広いが、軍が作ったとは思えないぐらい汚く、非常灯の類いも無い事から、この通路が使われた形跡は無く、寧ろこの通路の状態から、この基地は人革連時代の時、それも今から凡そ30年以上も前に建造されたと思われる。

龍義「……?」

通路の先の階段を上がった時、通路の天井の一角から光が漏れ出ていた。

龍義「ちょっと其処にいろ。」

龍義はミユを降ろして待機させ、龍義はゆっくりとその天井の一角の向こう を覗き見た。
天井の一角の隙間は、人一人の頭より少し小さい程度の広さであり、その向こうには『走る者達』と『銃を持つ者』と『MSの脚』があった。

龍義「(これは…やはり『アロウズの残党』…! アヘッドと紅いジンクスVがそれを物語っている……)」
「おいっ! 『アレ』はまだか?!」
「無理ですよ! 『アレ』を動かせる奴は居やしませんよ! というか高が『乗用車2台』に『アレ』は無駄じゃないですか?!」
「黙れッ!! 奴等が連邦軍に連絡したら俺達は終わりなんだぞ?!」
「ああっ! もう落ち着け! 兎に角さっさと片付ければ良いだけだろ!?」
龍義「(…ん?)」

龍義は紛糾するアロウズ残党兵の会話の中にある『アレ』に気を傾けた。

龍義「(『アレ』か…。何だ…? どういう事だ…?)」

龍義がそう思っている間にもアロウズ残党兵達は銃を持つ者と1機のジンクスVアロウズ仕様機を残してアヘッドとジンクスVアロウズ仕様機で出撃した。

龍義「(馬鹿め、車には誰も乗ってない………ハッ!)」

龍義は思わず通ってきた通路の向こうを見た。

龍義「(そう言えばあの『液体金属』がいたな…。しかし、何故あの『液体金属から脳量子波』が…?………いや、今は考えている暇は与えられてないか……)ッ……」

龍義はミユにジェスチャーで身を屈んで此方にくる様に指示し、ミユは龍義の言う通りに側に来た。

龍義「(さて…)」

龍義は辺りを見渡した。
龍義達の側、隙間の始点に扉があった。

龍義「(…よし。)」

次に龍義は瞳を金色に輝かせ、周囲の脳量子波による気配を探した。

龍義「(………あの男以外には誰もいないか……なら!)」

龍義は扉に手を掛け、扉が動く事を確認すると、ゆっくりと扉を開け、格納庫に入り、素早い動きで拳銃のグリップで銃を持つ者の米神を殴り、倒した。

龍義「……?」

龍義は何故か格納庫の奥にある巨大な扉が気になった。

龍義「(恐らく『アレ』というのは彼処にある様だな…)ミユ。」

龍義はミユを呼び寄せ、あの巨大な扉の側にある人間が入る扉を開け、その扉の向こうの部屋に入った。

龍義「ッ…!!」
ミユ「…えっ?」

その部屋に入った2人は、その中にあった『1機のMS』に目を丸くした。

ミユ「りゅ…龍兄、これって…?!」
龍義「ああ、間違いない。コイツは…『7年前に鹵獲された羽付きのガンダム』!」

それは、かつてマイスターのアレルヤごと鹵獲され、次世代主力MS(アヘッド)の糧となり、行方不明となっていたガンダムキュリオスだった。

龍義「(しかし……)」

龍義はそのキュリオスを凝視した。
キュリオスの膝にあるウイングはジンクスの膝アーマー、両腕はジンクスの腕になっており、更に言えば、それは『ジンクスWのそれである』。
更に両肩のハードポイントにはジンクスUのGNキャノンの後部にはGNドライヴ[Τ]が搭載しており、更にジンクスWのGNシールドと自作らしきGNミサイルコンテナ2基と1対の折り畳まれたウイングが合体した複合武装が搭載しており、背中からはジンクスのGNビームライフルの後部を転用したGNキャノンを1対搭載していた。

龍義「(まさか新型機であるジンクスWのパーツが使われているとは…未だにアロウズ残党のスパイが軍や政府の中に……)」
ミユ「龍兄、早く此処から出た方が良いよ。」
龍義「(…詮索するのは後にしよう。今はそんな時ではないか…)ああ、そうだな。」

龍義はキュリオスの所に向かい、机に置かれていたヘルメットをミユに投げ渡した。

ミユ「……えっ…? も、もしかして…?」

ミユはヘルメットとキュリオスを交互に見た。

龍義「当たり前だ。外にはアヘッドやジンクスVがいるんだぞ? それとも何か? このまま町まで逃げ切れるのか?」
ミユ「そ、それもそうだねぇ……」

ミユはヘルメットを被り、龍義の後を付いた。

龍義「…ほう……」

龍義はキュリオスのコクピットを見て、目を細めた。
コクピットは妙な狭さを感じたが、これはコクピットのモニターを無理矢理全周囲モニターにした事によるものだと推察された。
更に左右コンソールにあるモニター投影器も目を引いた。
そして、コクピット後部から伸びるコードは、シートに置かれた旧ユニオン軍のパイロットスーツのヘルメットを改造したヘルメットの側面に接続されていた。

龍義「…いける様だな。ミユ、行くぞ。」
ミユ「うん。」

龍義はそのヘルメットを被るとシートに座り、ミユはコクピット後部にある補助シートに座った。

龍義「…!? これは…!?」

龍義は『脳量子波拡張システム』から脳に直接送られてくる機体の状態や周囲の情報に驚いた。

龍義「…成る程な。これは動かせる奴が居ない訳だ。…しかし、何故こんな機体にしたのかは分からないが、『有り難く』使わせて貰うぞ。」

龍義はキュリオスを起動させた。

キュイイイィィィィ……

左右コンソールのモニター投影器から大量のモニターが表示された。

龍義「これは……」

龍義は大量のモニターを一瞥すると、軽く機体を動かした。
因みに龍義は大量のモニターの内容を一瞥しただけで理解していた。

ミユ「大丈夫なの?」
龍義「ああ、『今まで動かしたどのMSよりも動かし易い』。脳量子波を併用しての操作が前提の機体みたいだからな。」
ミユ「へぇ〜。……あ、そう言えばこのガンダムの名前って何なの?」
龍義「……ん?」

龍義の操縦悍を握る手が止まった。

ミユ「ほら、ガンダムっていっぱいいるでしょ。だからこのガンダムにも名前有るんでしょ?」
龍義「…そう言えばそうだな。だが、『羽付き』とか『デカブツ』とか『2個付き』とかの此方か付けた渾名でしか知らないしな………そうだな……『復活(リヴァース)』、ガンダムリヴァース。これにしよう。」
ミユ「リヴァースって……復活とか再生とかだよね?」
龍義「ああ、どれ位眠ってたかは知らないが、コイツにはお誂え向きだと思ってな。……そろそろ出るぞ。」
ミユ「うん。」
龍義「ガンダムリヴァース、飛鳥龍義、出る!」

龍義はキュリオス改めてリヴァースを起動させ、リヴァースの黄色いツインアイが光り出した。
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