『灰色の運命』

□第4話 ツインドライヴ
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軌道エレベーター、リニアトレイン

シン「………………」
ライル「………………」

シンとライルは黙ったままだった。
会話する切欠が無いからだ。
だが、その沈黙をライルは破った。

ライル「なあ、お前はガンダムマイスターって言ってたよな?」
シン「はい、そうですけど何か?」
ライル「だったら、ガンダムマイスターになった兄さんの事を知っているんじゃ?」
シン「言っときますけど、自分はCBが壊滅した後に入りましたからニールさんの事は殆ど知りませんよ?」
ライル「そっか、…いや、すまねぇな。」
シン「…まあ、俺は元々『この世界の人間』じゃないしな。」
ライル「は? どういう意味だそれ?」
シン「データを見れば判りますよ。」

そう言ってシンは携帯端末を取り出し、USBメモリーを差し込んだ。
このUSBメモリーの中にはデスティニーの全データがコピーしてあり、戦闘記録も勿論コピーしている。
シンは戦闘記録の方をライルに見せるつもりだ。

シン「これです。」

シンは携帯端末をライルに渡した。

ライル「………ッ!?…マジでかよ…!?」
シン「ええ、マジです。」

ライルは戦闘記録を見て、驚愕した。

ライル「こりゃ…まあ…。」

ライルは驚いた表情のまま戦闘記録を見た。
この戦闘記録、何故かインパルスの戦闘記録もデスティニーのデータに入っていた。
ただ、シンの手で編集が加えてあり、ステラに関する情報の大半は封じてある。

ライル「なっ!?」

そしてライルはある場面で更に驚愕した。

ライル「…これって、まさかお前…!?」

ある場面とは、シンのデスティニーが∞ジャスティスと相討ちになる場面だった。

シン「まあ、本当なら俺は其処で機体が爆発して死んでた。けど、何か『奇跡』が起きて、この世界に来たんだ。もう4年も前、CBが壊滅した直後だったな。」

ライル「…そうだったのか…。」シン「世界を変える覚悟も、罪を背負う覚悟もまだそんなに無いけど、CBのガンダムマイスターになった以上、世界と向き合おうとする皆を見習い、世界を向き合おうと思う。」
ライル「そうか…。」
シン「…………………」
ライル「…………………」

結局は沈黙になり、静止軌道ステーションに着いた。

シン「まだ来てないみたいだな。って当たり前か。」
ライル「ま、そうだな。」

シンとライルは刹那を待つ事にした。

ライル「…まあ、俺もちょっとは身の上話でもするか。」
シン「え?」
ライル「お前が自分の事話して俺だけ喋らないのもあれだからな。」
シン「そうか…。」
ライル「俺と兄さんは双子の兄弟で、後妹が一人だ。」
シン「…………」
ライル「だけどな、俺と兄さん以外は全員自爆テロで死んじまった。」
シン「自爆テロ…!?」
ライル「その後、俺は兄さんの援助を受けてAEUの商社マンをしてたが…、まさか兄さんがCBのガンダムマイスターだったなんてな…。」
シン「……………」
ライル「……………」

再び沈黙し、時間だけが流れた。

シン「(早く来ねぇかな…。)」

シンがそう思った時、到着ロビーから女性を連れて刹那が現れた。

シン「やっと来ましたか。(…ってあれ? あの人…まさか…?)」
ライル「そうみたいだな。」

シンとライルは刹那達の所に向かった。

ライル「よお、遅かったな。」

女性はライルを見て、驚いた表情をした。

「ロックオン?! そんな、生きて…」
ライル「そんなに似てるかな、俺と兄さんは。」
「お兄さん?」
刹那「紹介しよう。彼はライル・ディランディ…」
ライル「違うな。俺の名はロックオン・ストラトス。CBのガンダムマイスターだ。」

ライル改め、ロックオンはそう言った。

刹那「そうか。彼女はスメラギ・李・ノリエガ、CBの戦術予報師だ。シン。」
シン「いや。スメラギさん、お久し振りですね。」
スメラギ「…あなたは、シン・アスカ…。」
シン「ああ、覚えてくれてたんですね。……ってかどうやって引き戻したんですか?」
刹那「話はこのぐらいにして、トレミーに行くぞ。」
シン「おい、人の話しぐらい聞けよ。」

刹那達は小型艇に乗り、プトレマイオス2に向かった。

ピピッ

刹那「緊急暗号通信、トレミーからか。」
ラッセ『王留美(ワン・リューミン)からの情報だ。アロウズにこっちの位置を知られた。』
シン「何だって!? ハッ!?」

シンはモニターを拡大した。
モニターには巡洋艦から発進するアロウズのMSが映っていた。

刹那「敵の編隊。」
ロックオン「アロウズのMSか。」
スメラギ「刹那、こっちの戦力は?」
刹那「ティエリアとシンの機体だけだ。だが、ロールアウト間近の新型がある。」
スメラギ「3機だけ…。」
ロックオン「ずいぶんと寂しい組織なんだな。」
シン「5年前なんかガンダム4機で性能差がかなりあるといっても世界と戦ってたんだぞ?」
ロックオン「ああ、そういえばそうだな。」
スメラギ「………………」

スメラギはこの状況を見て、戦術プランを考え、そしてスメラギはプトレマイオス2に緊急暗号通信を送った。

シン「スメラギさん? トレミーに通信を?」
刹那「戦術プランか。」
シン「戦術プラン…。」

プトレマイオス2から機雷が射出し、敵の動きを止めた。

スメラギ「ST27のルートを通って。」
刹那「了解。」
シン「(大量の機雷…足止め…セラヴィーの火力。…ハッ! まさか!)」
ロックオン「なるほど、そういうことか。」

シンとロックオンはスメラギが何を考えたのか分かった。

ティエリア「セラヴィー、目標を迎撃する。高濃度圧縮粒子充填、GNバズーカ圧縮粒子解放!」

セラヴィーはGNバズーカUを背中のGNキャノンに接続し、圧縮粒子解放による高濃度粒子ビームを放った。

ドドドドドドドド…ッッ!!!

高濃度粒子ビームは大量の機雷を爆発させ、敵MSを巻き込んだ。

シン「す…凄い…!」
ロックオン「ヒュー♪ やるね。」

シンはスメラギの戦術プランに驚き、ロックオンは関心した。

刹那「いや、まだだ。」
シン「えっ?」
ロックオン「おい!」
シン「!?」

数機のMSが爆発から出た。

シン「チッ! あの数のMSじゃセラヴィーでは止められない!」
刹那「イアン、ダブルオーを出す。」
イアン『ちょ、ちょっとまて刹那! こっちはまだ…!」
刹那「時間がない。操縦を頼む。」
シン「チッ、分かった。」
ミレイナ「小型艇着艦準備、およびダブルオー発進シークエンスに入るです。第1デッキ、ハッチオープンです。」
ロックオン「あれがCBの…」
ミレイナ「ダブルオー、カタパルトデッキに搬送です。」
シン「後ろ!」

シンは敵MSの攻撃を回避し、刹那は小型艇から出て、プトレマイオス2のカタパルトデッキに向かった。

刹那「ダブルオー、0ガンダムとエクシアの太陽炉を乗せた機体。俺のガンダム…。」

刹那はカタパルトデッキに搬送したダブルオーのコクピットに乗り込んだ。

刹那「ツインドライヴシステム、いけるか?」
イアン「刹那、ダブルオーはまだ───」
刹那「トランザムを使う。」
イアン「無茶だ! 刹那よせ!」
刹那「トランザム始動!」

ダブルオーはトランザムによって紅く輝いた。

イアン「やりやがった!」
フェルト「ダメです! 粒子融合率73パーセントで停滞!」
イアン「トランザムでもダメか。」
ミレイナ「敵MS2機、急速接近中です!」

一方、セラヴィーはアヘッドに蹴りを入れられた。

ティエリア「ぐぅ! ダブルオーは!?」
刹那「目覚めてくれ、ダブルオー。ここには、0ガンダムとエクシアと───」

プトレマイオス2に接近したアヘッドは、ダブルオーにビームライフルを向けた。

シン「刹那!」
刹那「俺がいるッ!!」

そして、その刹那の叫びに同調するかの様にツインドライヴの同調率が安定領域に達した。
その直後、アヘッドはビームを撃った。

ガシャン! キィィィィィィィィィィィ…!!

ダブルオーはGNドライヴを前方に向け、GNフィールドでビームを掻き消した。

イアン「き、起動した! 二乗化のタイムラグか!」
フェルト「ツインドライヴ安定領域に達しています。」
「や、やったのか?」
「なんだあの光は!」
ロックオン「はっ…。」
ティエリア「おっ…。」
シン「…………………」

シンはダブルオーから放たれる膨大なGN粒子に見とれていた。
「なんだ、あのシステムは?」

何処かの場所でその光景を見ている者がいた。
そう、その者こそ、ヴェーダを掌握したリボンズ・アルマークである。

刹那「ダブルオーガンダム、刹那・F・セイエイ、出る!」

ダブルオーはGNドライヴを今度は後ろに向け、出撃した。

「新型!」
「アヘッドで叩く!」

1機のアヘッドと2機のジンクスVによる包囲攻撃を、ダブルオーは簡単に回避した。

刹那「ダブルオー、目標を駆逐する!」

ダブルオーはGNソードUをライフルモードにし、アヘッドに一撃を与えた。

「な、なんだと!」

ドガァアアアアアアアアンッッ!!!

爆発するアヘッド。

「やられた!?」
「クソッ! ガンダム!!」

ジンクスV2機はダブルオーに攻撃を加えた。

「ッ!?」
「なっ…何ィ?!」

ダブルオーは、前に向けたGNドライヴを高速回転させてGNフィールドを発生させ、ジンクスVの攻撃を防いだ。

刹那「そこッ!」

ダブルオーはジンクスVを攻撃し、撃破した。

「なんだあの性能は!? なら、こいつで!」

ジンクスVは粒子撹乱幕の入ったグレネードを投げ、爆発させた。

刹那「!」

粒子撹乱幕によって拡散する粒子ビーム。

「これでビーム兵器は役にたたない! 接近戦では、こっちが有利!」

そう意気込むアロウズ兵士。
だが、彼はとんでもない間違いを冒していた。
ダブルオーの性能、GNソードUの能力と威力、ダブルオーのパイロット(マイスター)。
いくら知らないとはいえ、粒子撹乱をした時点で『逃げ』の選択をすれば生き残った可能性があった。
だが、彼が取った行動は、『格闘戦』だった。

刹那「これがッ! 俺たちのッ! ガンダムだッッ!!」

ダブルオーはGNランスごとジンクスVを真っ二つにした。

ティエリア「刹那…。」
ロックオン「あれが、ガンダムの力か…。」
シン「世界を変える力…。」
スメラギ「刹那…。」
ミレイナ「敵MS、撤退していくです。」
沙慈「ガンダム…。」
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