『灰色の運命』

□第7話 再会と咆哮
2ページ/6ページ



─────────


「会談に応じてくれて感謝する。カタロン中東支部、クラウス・グラードです。」
スメラギ「CBです。自己紹介は…」
クラウス「事情は承知しています。」
シーリン「マリナ姫を助けてくださって、感謝しますわ。以後は我々が責任をもって保護させてもらいます。」
マリナ「シーリン…。」
シーリン「CBにいたいの?」
マリナ「あなたこそ、反政府組織に…」
シーリン「いけないこと?」
刹那「もう一人 保護を頼みたい。沙慈・クロスロード、民間人だ。いわれなくアロウズからカタロン構成員の疑いをかけられている。」
クラウス「それは気の毒なことをした。責任をもって保護させていただこう。」
沙慈「ちょっと! 勝手に…」
スメラギ「そうするのが一番よ。」
シン「俺達と一緒にいた方がもっと危険だ。もしかしたら死ぬかも知れないし、此所なら安全だ。」
沙慈「……………」
シン「(しかし何だ…? この視線。さっきから俺だけに向けられている様な気がするんだけど…。)」

シンは先程から何者かの視線を感じていた。

シン「(CBの人間が物珍しいのは分かる。だけどずっと俺だけなんだよな。どういう事だ?)」

シンは思考の奥に行こうとした時、突然子供達が入ってきた。

「ねえ、何してるの?」

クラウス「コラ、勝手に入ってきたらダメだろう?」
シン「こんな所に…(あの子達じゃなさそうだな。)」
刹那「子どもが…ハッ!」

刹那は子供達を見て、昔の自分を思い出した。

刹那「まさか、カタロンの構成員として育てているのか?」
二人「えっ?」
シン「刹那? アンタ何言ってんだ?」
シーリン「勘違いしないで。身寄りのない子供達を保護しているだけよ。連邦が行った一方的な中東政策、その実害は、このような形でも表れている。」
クラウス「尤も、資金が限られていて、全ての子供達を受け入れるわけにはいかないが。」
シン「だってさ。」
刹那「……………」
「あ! マリナ様だ!! ねえ、マリナ・イスマイール様でしょう?」
マリナ「ええ。」
「私もしってる!」
「すご〜い! ほんとにマリナ様だ!」
シーリン「マリナ様。子どもたちの相手をしていただけるかしら?」
マリナ「ええ。」
「いいの?! じゃあこっちこっち!」
「私も〜〜うふふ」

子供達に手をひかれてマリナは別室へ行った。。

シーリン「さすがシンボルといったところね。」

シーリンは皮肉も込めてそう言った。

クラウス「そろそろ本題に入りたいのだが、我々カタロンは、現連邦政権打倒のため…」
スメラギ「もうしわけありませんが、私たちはあなた方のように政治的思想で行動しているわけではありません。」
クラウス「ですが、あなた方は連邦と対立している。」
刹那「俺たちの敵は、連邦政府ではなく、アロウズだ。」
シーリン「政府直轄の独立部隊を叩くことは、私たちの目的と一致するのではなくて?」
クラウス「そうだとも。アロウズの悪行を制するためにも、我々はともに手をとりあい…」
ティエリア「残念ながら、ここにあるMSではGNドライヴ搭載型に…」
クラウス「だとしても、我々はあなたたちに協力したい。補給や整備だけでも、力になりたいのです。」

CBとカタロンの対談は、マリナと沙慈の保護と、補給と整備の了承で終わった。

シン「…とはいえ、カタロンはまだ諦めてる訳でもなさそうだな…。」

シンは気晴らしにカタロン基地を歩いていた。

シン「…ん? 刹那?」

シンは通路の向こうに刹那を見付けた。

シン「どうしたんだ? そんな所にいて?……ああ、そういう事か。」

刹那の視線の先にあったのは、子供達と戯れるマリナだった。

シン「(…これが、CBが変えた世界の実情か…。だけど、CBはまた世界を変える為に戦う。こんな世界にしてしまった罪を償う為に…。)」

シンにも漸くCBの罪と償いが分かった瞬間である。

刹那「…………」

刹那は部屋に背を向け、立ち去ろうとした。
その刹那の視線の先には沙慈がいた。

沙慈「あの子供達も君達の犠牲者だ。君たちがかえた世界の…。」
刹那「ああ、そうだな。」
沙慈「何も感じないのか?!」
刹那「感じてはいるさ。俺は二度と、あの中に入ることはできない」
シン「…………」
沙慈「それがわかっていて、なぜ戦うんだ?!」
刹那「理由があるからだ。わかってもらおうとは思わない。恨んでくれてかまわない」
沙慈「刹那…クッ!」
シン「沙慈。アンタの言う、『当たり前』は俺も分かる。」
沙慈「え…?」
シン「当たり前な生活…平和…幸せ…。ずっと続くと思っていた。」
刹那「…………」
シン「だけどな、戦争は、そんなものなんて一瞬で、簡単に吹き飛ばしてしまう。人の命も…。どんなにキレイに花が咲いても、人はまた吹き飛ばす。」
沙慈「あ…。」

沙慈はシンの手が強く握り締めているのを見た。

シン「だけど俺も、『守る力』を求めて結局は花を吹き飛ばす側に付いたんだよな…。ハハッ、皮肉だろ?」

苦笑いを浮かべながら話すシンに沙慈が掛ける言葉は無かった。

刹那「………」

刹那はシンの話が終わったのを確認してから立ち去ろうとした。

マリナ「刹那、待って。行ってしまうの?」
刹那「ああ。」
マリナ「その前に、一つだけお願いを聞いてほしいの。」
刹那「分かった。………」

刹那は通路の角を見た。

刹那「其処の、何故シンだけを見ていた?」
シン「えっ…?!」

刹那は対談の時からシンだけを見ている者の存在に気付いていた。

刹那「出てこい。」

刹那は決して怒っているわけではないが、少し強い口調で言った。

シン「ちょっとそれは幾ら何でも言い過ぎだろ。」

シンは刹那を宥めるように言った。

「あれ? もしかして『マユお姉ちゃん』?」
シン「ッ!?」

少年の言葉に驚くシン。

シン「(イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ…! ちょっと待て俺! 此処は別世界だし、それ以前に……)」

シンは自分を落ち着かせようとて逆に落ち込んだ。

「………………」

そして、そのマユと呼ばれた人物は通路の影から出た。

シン「ッ!!? なっ…!?」

その人物を見てシンは驚愕するしかなかった。

シン「マ……ユ……?」
「…お兄ちゃん…。」

シンは成長した自身の妹、マユ・アスカをただただ見つめるしかなかった。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ