『未来を斬り拓く対話と運命の翼』

□第5話 Extraterrestrial Living-metal Shapeshifterと目覚める者
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宇宙

プトレマイオス2改


ミレイナ「ハプティズムさん、ピーリスさん、お久し振りです!」

プトレマイオス2改に帰還したアレルヤとマリーをミレイナとフェルトが迎えた。

アレルヤ「随分雰囲気が変わったね、ミレイナ。」
マリー「その髪形、とても似合ってるわ。」
ミレイナ「大人の女に脱皮中です♪」

そんなミレイナをアレルヤは兄の様な眼差しを送った。

アレルヤ「フェルトも。」
フェルト「えっ…? あ、うん。」

フェルトは気恥ずかしそうに微笑んだ。
フェルトも女性であり、外見の変化を褒める言葉は嬉しかった。
事実、フェルトが髪を短くした当初、女性クルー達からは好評を得られたが、『本当に言って欲しい相手』からは感想すら言われていない。

フェルト「…あ。」

フェルトは刹那、シン、ロックオンの姿を確認したが、刹那の表情に微かな翳りがある事に気付いた。

フェルト「刹那、怪我はない?」
刹那「ああ。」
フェルト「(…………)」

フェルトは何かを刹那に尋ねようとしたが、言葉の選択に迷っていた。

シン「…………」

シンも刹那の表情の翳りには気付いていたが、あのリボンズ顔の男が異常なものである事は分かっている。
だからこそ、自分よりも強力で安定した脳量子波を持つ刹那が『分からない』となるとシンにはほぼお手上げ状態である。

スメラギ「刹那、シン。」

其処にスメラギとラッセが来た。

スメラギ「クロスロード君達は?」
刹那「連邦政府の対応で脳量子波遮断施設に避難している。」
シン「流石に対応が早いよな。どっかのバカの傀儡政府だったらこうはいかない筈だよな。」
スメラギ「そう、それは良かったわ。良い判断だわ。」
刹那「それより、頼んでいた件だが……」
シン「ん??」

シンは、これは長い話になりそうだとロックオンにアイコンタクトを取り、ロックオンは軽く頷いた。

スメラギ「…その事だけど……」
ロックオン「その前に一息つかせてくれ。」
スメラギ「…そうね。じゃあ、0012にブリーフィングルームに集合で。」
シン「フゥ…」

スメラギの提案にシンは一息ついた。

ロックオン「りょ〜かい。」

ロックオンはラッセに後は任せるぜとアイコンタクトを取って自室に向かった。

ラッセ「アレルヤ達も休めよ。部屋はそのままにしてあるぜ。」
アレルヤ「有り難う。行こうか。」
マリー「ええ。」
ミレイナ「私が案内しますよ。」
アレルヤ「フェルト、また後で。」
フェルト「ええ。」

フェルトは刹那を見た。

アレルヤ「スメラギさん、後で報告書を出します。」
スメラギ「宜しくね。」

アレルヤとマリーはミレイナとラッセの後に付いて行った。

シン「(さてと…)」

シンは刹那を見て、これ以上はスメラギに任せるべきだと判断をし、自室に向かうべく床を蹴った。

ガシッ!

シン「おうふっ?!」

シンはスメラギにパイロットスーツの襟首を掴まされた。

シン「へっ?」

スメラギはちょっと待ってという視線をシンに送り、シンはコクリと頷いた。

フェルト「…刹那、どうかした?」
刹那「……いや、別に…」

そう言う刹那だが、表情は暗く、口調にも翳りがあった。

フェルト「…何か、感じたんでしょ?」
刹那「…ああ…。だが、うまく言葉に出来ない……」

刹那はそのまま自室に向かった。

フェルト「あ……」
シン「ッ……」

シンは刹那の気持ちが分からんでもないと目を附せ、フェルトは追い掛けたいという衝動を抑えた。
例え追い掛け、声を掛けたとしても、刹那が抱えている『何か』を解決出来る訳もないと思ったからだ。
それが、『イノベイター』と『普通の人間』の違いなのかと、フェルトはそう思ってしまう自分にも悲しみを抱えた。

スメラギ「…刹那の事が、気になるのね。」

スメラギの言葉にフェルトは顔を上げたが、直ぐに俯いた。

フェルト「…何だか怖いんです。刹那がイノベイターになってから、出会った頃に戻ってしまった様で…。誰にも心を開かなかった、あの頃に……」
スメラギ「変革した自分に戸惑っているのよ、その能力にも…。私達と違う自分を、強く意識してる……」
フェルト「…………」

フェルトはスメラギの言葉に心を寒くした。
『他人と自分は違う』。
それは人間としては当たり前であり、常識中の常識である。
それは例え『クローン人間』、『デザインベイビー』、『生体端末』でさえも全く同一の人間はいない。
それ故にこの世界は多様性を生み出し、保持している。
だからこそ、その隔たりは大きく、刹那が共に戦ってきた仲間達にさえ見えざる壁を感じているとすれば、それは
あまりにも悲しい事であった。
それは同じ様に考えてしまい、それを排除しようとしたフェルトだからこそ、余計に辛く思えた。

シン「…………」

シンは自分の左手を見た。
この世界に来て、もう7年程の歳月が流れていた。
その中でシンはCBのガンダムマイスターとして、CBの技術によって第6のオリジナルGNドライヴを搭載したデスティニーを駆り、アロウズとその背後にいる、リボンズ・アルマーク率いるイノベイド軍との戦いに身を投じた。
その戦いの中でこの世界に来ていた妹とのまさかの再開があり、かつての上司、そして敵となった者との戦いとそれによる脳の損傷によって利き手を変えられた。
そして、リボンズとの戦いの果てにはまさかの自分が生まれ、そして永遠の別れを告げた筈の世界へと戻り、そこでも戦いに身を投じ、その戦いの中でかつての戦友との再開と合流を経て、あの蒼い翼の宿敵を撃ち果たし、再びこの世界に戻り、今はイノベイターの『成り掛け』となっていた。

シン「(だからこそ、俺はイノベイターになる事自体には抵抗は無いんだけどなぁ……)」

肝心の脳量子波が強力ではあるが不安定な為に真の意味でのイノベイターにはなれず仕舞いだった。

フェルト「…私、刹那に何をしてあげれば……」
スメラギ「彼を、『思ってあげて』。」
フェルト「?!…彼を、思う……」
スメラギ「そう…それが、分かり合う為に必要な事…。例え、すれ違ったとしても、その気持ちは相手には届かない…。強い思いが人と人とを繋げてゆく…。本当の意味で分かり合う為に……」
シン「自分の全てをさらけ出し、相手の全てを受け入れ、分かり合う事が……」

思わず呟いたシンの言葉にスメラギはシンの方を向いて頷き、直ぐにフェルトの方を向いた。

スメラギ「彼への思い、無くさないでね。」
フェルト「……はい…」

フェルトは決意を込めてそう言った。
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