魔女の物語集

□ホーキンス
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「なんか、ホーキンス船長ソワソワしてないか?」
「機嫌良い?」

朝食の席へやって来た船長を見て、船員達は首を傾げていた。

「全員いるか」

そんな船員達を知ってか知らずか、食堂にいるのが全員かを確かめて口を開いた。

「今朝手紙が届いた。昼過ぎに客人を一人迎えようと思う」
「客人、ですか?」

「ああ、俺の恩師だ」
「恩師?」

ホーキンスの口から出てくる言葉に首を傾げ続けているの仲間たち。

「俺に魔術を教えてくれた偉大な魔女だ」

この一言に驚きながらも、どこか納得しているみんな。

(そうだよな、ホーキンス船長を訪ねて来る人が普通な訳ねぇよな)
(魔女って事は女か。恩師って言ってるし、婆さんかな)

それぞれが頷いて、ホーキンスの次ぎの言葉を待つ。

「会うのは久しぶりだが、多分足が十二本ある猫にのって来ると思う」

だから海を走っている猫がいたら知らせろと、今日見張りを担当している者に言って席に着いた。

「ね、猫?」
「ああ」

コックが持ってきた皿を前にして、スプーンを手に取る。

「ま、魔女って、猫にのって来るんすか?箒とかじゃなくて?」
「先生は箒に乗らない。猫バスという生き物を飼っているからな」

「と、特徴とかは」
「そうだな」

少し考えるように視線と動きを止め、手に持っているスプーンをテーブルと垂直になるように持った。

「これが人だとしたら、」

猫バスはこのくらいだと、テーブルの中央に置かれている大きなパンを示す。

「「化け猫じゃないですか!!」」

船員達が声を上げるが、ホーキンスは違うと否定して来る。

「化け猫ではなく、猫バスだ」
「猫バスって何すか?!足が十二本って!ってかどうやってここまで来るんすか!!?」

ここはグランドラインの真っ只中。四方を海に囲まれており、次ぎの島まで三週間はあると言われている。

「猫バスは足が早い。水の上を走ることもできるんだ」
「それ完璧に化け猫ですよ!!」

「と、というより、一人増えるとなると水や食料の心配も・・・」
「そこは心配いらないと手紙に書いてあった」

ポケットから手紙を出し、中身を確認していく。

「今回は先生の都合で七日間程滞在したいから、その間必要な物は自分で用意して来るそうだ」

これから何が来るんだと騒ぐみんなだが、ホーキンスはウキウキしていた。

もちろん、ホーキンスからすればということで、ぱっと見は普段と何も変わっていない。

そんなホーキンスの変化も、一緒に旅をしているみんななら分かる。嬉しそうなホーキンスを見て、一人が声をかけた。

「船長の恩師って、どんな人なんですか?」

魔女であるという事と、化け猫を飼っているということからただの人ではないと分かるが、

「そうだな」

聞かれたホーキンスは、食事の手を止めて少し考える。

「誰よりも魔力が強く、膨大な知識のある人だ。あまりにも知識が多いので、昔何歳か聞いたことがあった」

『私は永遠の二十歳よ』

「祖母の話を聞いたかぎりでは、百歳近いかもしれない」
「・・・そうですか」

そんな婆が七日間も船旅に耐えられるのかと、みんなは自分の食事をはじめたのだった。


朝食を終えた後、ホーキンスの言い付け通り船を掃除していくみんな。

「特に食堂と甲板は念入りに、か」
「船長は?」

「自分の部屋片付けるとよ」

七日間は自分の部屋を使ってもらうつもりなんだろと、甲板を掃除する手を動かす。

「・・・すげぇな魔女」

船長の部屋で寝起きすんのかよと、魔術に使う道具で溢れているまがまがしい部屋を思い出してこぼす。

「な」

みんなで頷いて、昼前には掃除を終わらせた。

ホーキンス海賊団は、元々そんなに船を汚したりしていない。綺麗にしなければ運気が下がると、船長から掃除命令がくだるのだ。

「やっぱ、魔女も占いとかすんのかな」
「するんじゃね?船長も魔女から教わったんだろうし」

占いの結果が違ったらどうなるんだろうなと、船員達はピカピカの甲板から空を眺めた。
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