bride
□薔薇の鎖
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夢を見た 怖い夢を
遠ざかる背中に怯えた
あるはずのその温度を
《もう一度》ってさがしてた
夢うつつに無意識に伸ばしてしまった腕は行き場をなくすかと思いきややんわり掴まれた事に驚き思わず目を見開くと白蘭がにっこりと優しげに微笑み握っているのが目に入った。
「おはよう、大丈夫?」
ずいぶんうなされてたみたいだけど。
ニヤニヤと馬鹿にするように嘲笑うこの笑顔が骸は大嫌いだった
「--っ、」
悔しげに顔をしかめると腕を離せと言わんばかりに力を込め引くがやんわりと絡められた白蘭の指を外す事安易ではなかった
「…何がしたいんですか」
「ん?別に」
「じゃあ離せ」
「それはヤダ」
このくだらない会話が延々と続くかと思ったら嫌気が注して骸は掴まれた手首をそのままにベッドの中へ再び潜り込んだ。
「あぁ、そうそう」
骸君にお土産持ってきたんだよ
足元に投げ捨てるように置いてあったものを拾い上げ骸の顔の前に差し出されたのはなんと滲み一つ見当たらない鮮やかな真紅の薔薇の花束だった。
「…勘違いしているかもしれませんが僕は男です」
「知ってるよ」
「薔薇なんてもらっても喜べません。」
「でも君に似合うと思って」
ダメだ、この男の脳みそは完全に沸騰している。少なくとも正常な人間ならば男に薔薇を渡して喜ばないはずだ。
苛々しながら薔薇と白蘭から目をそらすように背を向けるといきなり顎を掴まれ無理矢理白蘭へ視線合わせられ唇を奪われる
「--っん、う…」
「ねえ骸君、誰が僕から目を背けていいなんて言った?」
一瞬冷たい視線を向けるもまたいつもの笑顔を貼り付けて白蘭は薔薇を一輪掴み骸の目の前でぐしゃりと握り潰した。
「薔薇ってさあ、君みたいだなって思ったんだ」
綺麗なクセにすぐに壊せる。でも散ったあとは決して醜くなんかなくて美しく散るんだ。醜くさを知らず誇り高く咲き誇る、ね?君みたいでしょ?
心底どうでも良さそうに話を聞いていた骸は深くため息をつき白蘭を睨み付けた。
「馬鹿馬鹿しい。僕を花ごときと同じに考えないで下さい」
「--ふふっ、そう…」
じゃあ僕を楽しませてね
ベッドの上で寝転ぶ骸に跨がると簡素な長襦袢の中へ指を這わせた白蘭の指のひんやりとした感触にびくんと身体を跳ねさせ生物のように動く指を空いてる片手で必死に阻むが首筋から胸、下股へと這う指は性感帯を刺激する。
「…ん、やっ…め」
「あぁ、骸君は痛い方が好きだもんね」
「なにする、つもり…だ」
ガタガタと目に見えて怯えるように震える骸に白蘭は面白いと言うように嘲笑い手元に落ちていた花束からもう一輪赤い花をつけた薔薇の棘々しい茎で骸の両手首をベッドの柵へと縛り付けた。
「っ--!!?痛い、離せ!!」
「あっはは、いい姿だね」
暴れる度に手首に食い込む棘に顔をしかめながら骸は必死に虚勢を張った。手首からは血が伝いボタボタと白いシーツに真っ赤な滲みを作る。
痛がる骸にお構い無しで白蘭は骸の身体を貪った。唾液で濡らした指を無遠慮に骸の中へ差し込むとそれらを上下左右に動かす。
「んぅ--…いっ!!…あ」
「痛がる割にはいつもより感じてるみたいだね」
にっこり笑って引き抜いた指を骸に見せつけるように目の前に晒すとなんなら薔薇でも中に突っ込むか。などと冗談なんだか本気なんだか分からない言葉を口にした
「…っ冗談じゃない」
「きっと君は感じちゃうと思うよ」
楽しそうに笑うこの男を殺してやりたかった。喉を抉り潰し無駄口が叩けないようにぐちゃぐちゃに…
そんな事を考えていると不敵な笑みを浮かべた白蘭は中心を骸の中へ無理矢理押し込んだ
「--ひっぐっ…やだ、っあ!!」「…っ、きっつ」
ぎりぎりとした圧迫感を感じながら無理に捩り込もうとする白蘭に嫌だ、嫌だと制止の声を掛けるも聞いては貰えず激しい痛みに意識が飛びそうになる。
鎖骨や首筋、肩や耳たぶに舌を這い強く吸い付かれては鬱血のあとが薔薇の花弁と同じように赤々しく骸の身体に跡を残す。
「は、あ…っん」
「ほら、甘い声が出てる」
今まで以上に激しく抜き差しされ前を握り込まれた。先端を親指の爪で潰され涙が零れる。
「い…あっ、--んあああっ」
「っく--」
喘ぎ声とはまた何か違う声で相手が思うままに悲鳴を上げて…自分の欲が腹部を汚しそれとほぼ同時くらいに白蘭も射精したのであろうどくどくと奥が熱い。そのまま軽く揺さぶられ精を更に奥へと流し込まれる。
射精の余韻に浸りながら二人は唇を重ねる。酸欠になるほど貪りあい長く静かな夜を過ごした。
好色と嗜虐の目と
組み敷かれる屈辱と
恍惚の狭間に視る
悲しき幸福の影
縋りたいのがなお愛なんて
人間はどれほどまでに
愚かな生き物だろう
END