イヴのキセキ

□第四章
2ページ/5ページ

「・・・そういえば次元。」

「なんだ?」

車に乗って美術館へ向かう次元と五エ門。次元はチラリと時計を見、まだ11時じゃないことを確認する。

「先程は楽しげな夢を見ていたようだが・・・どんな夢を見てたのだ?」

「・・・あぁ、それは・・・。」




















楽しかった頃の夢を見てたんだ。




















そこまで言おうとして口を閉ざす。あの言い方じゃ、まるで今が面白くないみたいだ。今、は面白い。今現在は。





でも、その後は?















三年後は、あんなにも、つまらない。














「次元?」

五エ門の声が隣の助手席から聞こえる。コイツが助手席なんて珍しいな、なんて思って、三年前も同じこと思ったな、と思う。

「じ、」

「何でもねぇ。ただの夢だ。」

「・・・そうか。」

多少引っ掛かりを感じたのだろう。だが、俺も言うつもりはないんだ。すまねぇな、五エ門。

チラリ、もう一度時計を確認する。

10:40・・・どうやら時間通りに作戦を始められそうだ。

次元はハンドルを回すと、美術館への道を進んだ。

「・・・。」

時間がないことに苦しんでいる、己の心を無視して。






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ