イヴのキセキ
□第四章
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「・・・そういえば次元。」
「なんだ?」
車に乗って美術館へ向かう次元と五エ門。次元はチラリと時計を見、まだ11時じゃないことを確認する。
「先程は楽しげな夢を見ていたようだが・・・どんな夢を見てたのだ?」
「・・・あぁ、それは・・・。」
楽しかった頃の夢を見てたんだ。
そこまで言おうとして口を閉ざす。あの言い方じゃ、まるで今が面白くないみたいだ。今、は面白い。今現在は。
でも、その後は?
三年後は、あんなにも、つまらない。
「次元?」
五エ門の声が隣の助手席から聞こえる。コイツが助手席なんて珍しいな、なんて思って、三年前も同じこと思ったな、と思う。
「じ、」
「何でもねぇ。ただの夢だ。」
「・・・そうか。」
多少引っ掛かりを感じたのだろう。だが、俺も言うつもりはないんだ。すまねぇな、五エ門。
チラリ、もう一度時計を確認する。
10:40・・・どうやら時間通りに作戦を始められそうだ。
次元はハンドルを回すと、美術館への道を進んだ。
「・・・。」
時間がないことに苦しんでいる、己の心を無視して。
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