イヴのキセキ
□第五章
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バクバクとなる心臓は走っているからか、それとももうすぐ待ち構えている別れのせいか。
「ハァ、ハァ・・・!」
次元は影縫い道具と緑の帽子を両手に持ち、走っていた。後ろには警備員達は居ない。撒いてきたのだ。
だが油断はしてられない。次元は乗ってきた車に乗ると、ハンドルを握った。
「・・・。」
次元はアジトの前に車を停めてルパン達の帰りを待っていた。
車の中には盗んできたふたつのお宝。後ひとつ、ルパンが持ってくれば揃うのだ。
「・・・。」
何を期待しているのだろう、自分は。
わかっているのに。待っていたってルパンは帰って来ないと。わかって、いるのに。
「・・・。」
次元は無言で煙草に火をつけた。黒色の空に消えていく煙。それは己の白い息と共に。
「・・・。」
次元はポケットから携帯を取り出す。それは、ルパンとの別れを示すモノ。
別れを、示すモノ。
「・・・ルパン。」
次元はただただじっとして、呟く。ここまで来て、嫌だと言う心がいるのだ。辛い、苦しい、悲しい。辛い、辛い辛い。
胸がどんどん苦しくなっていく。締め付けられたような、そんな風に。
「・・・。」
次元は携帯を弄り、発信を押すと耳元へと近づけた。
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