frog prince
□その距離 約三十センチ
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【フランside】
せっかくのデートの日なのに。
チッと乾いた音で舌打ちをして、さっとシャワーを浴びて服選びもそこそこにアジトを飛び出した。
待ち合わせの時間からすでに1時間が経っている。
「……待っててくれてますかねー」
もしかしたらもう怒って帰ってしまったかもしれない。
今から待ち合わせ場所に向かって入れ違いになるのは何かと面倒だ。
いったん立ち止まって携帯を取り出し、電話を掛けてみる。
長いコールの後でぷつ、とようやく繋がった音がしたから意気込んだのに聞こえてきたのは無機質なアナウンスだった。
『お客様がお掛けになった電話は、電波の届かない所にあるか、電源が入っておりません――』
「あー、もー…」
むやむやしながら通話終了のボタンを押す。
電波が届かないか、電源を切っている…
…つまりどっちなのだろう。
受信者に受信の意思があるのだが電波が届かないのか。
それとも意図的に電源を切って着信を拒否しているのか。
大きな違いなのにそれほど重要視しないで、一括りにしてアナウンスするなんて携帯会社の神経を疑うがそれどころではない。
今回ばかりは自分が悪い。
ポケットに携帯を押し込んで待ち合わせ場所に走った。