twin・prince
□その隙間を埋めたいから
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ぎゅう、とそこだけ色が変わるほど強く手首を握り締めて、俺はものも言わずにヴァリアー邸の廊下を歩いた。
ほとんど引き摺られるみたいにして着いてきているジルも、何も言わないけれど必死で俺の手を振りほどこうと無言の抵抗を続けていた。
だからって立ち止まったりとか、空いてる手も使って引き剥がそうとか、そんな大胆な抵抗をするわけじゃなく、そもそも抵抗と呼んでいいのか躊躇われるくらいの小さいやつだけど。
もう目を瞑っていても難なく歩けるくらいに熟知したヴァリアー邸の廊下を右に、左にジグザグ歩いて、たどり着いた部屋のドアを開けて、ベッドにジルを投げ込んだ。
どさ、と音を立ててベッドに仰向けに転がったジルを見下ろす。
そんなジルは恐々と俺を見上げた。
けれどそんな姿には構わず、俺は一度ベッドを離れて着ていた隊服を脱いだ。
脱いだ隊服を適当に丸めて床に放って、部屋に取り付けてある冷蔵庫から適当に飲み物を探す。
さっきまでの成り行きから強引に事に及ぶと思われた俺の予想外の行動に、ジルは戸惑うようにベッドから身体を起こして俺を見た。
俺は見つけ出したミネラルウォーターのペットボトルに口を付けながら、俺の行動を伺うジルを見つめ返す。
被害者ぶったその表情そろそろ見飽きたかもな。王子は思う。
何の味もしないミネラルウォーターである程度喉を湿らせてから、キャップを閉めて冷蔵庫に戻した。
「…別に嫌なら今のうちに出てっていいぜ。
好きなようにすれば?」
冷蔵庫のドアを閉めつつ、ジルの方を見もせずに淡白な言葉をかける。
けれどジルは何も言わず微動だにしない。
「…ほら、どうしたんだよ?
先制攻撃でも敵前逃亡でもおまえにくれてやるよ?」
詰問するような俺の言葉を聞いて、ジルはベッドの上に座ったまま真っ赤になって口惜しそうに唇を噛んで俯いた。
…そう。知ってるんだ、お前がたとえ義理でも俺に抱かれたいってことくらい。
馬鹿だよな、本当に。
形だけの交尾なんて空しいだけだって、きっとこいつももう分かってるはずなのにさ。
「…じゃあ、次王子のターンね」
俺はドアを閉めて屈んでいた体勢から体を起こして、ベッドの方に近付いた。
ジルはベッドの上で、期待からか恐怖からなのか、もぞもぞと後退りした。
俺はそれを見て、
「…何それ、逃げてるつもり?
全然意味わかんねー」
任務の時、標的を追い詰める時のと同じ言葉をジルに投げ付けた。
俺にしてみれば、お前はただの欲を晴らすだけのターゲットだから。
王子はね、自分が気持ちよくなれるんなら方法とか手段とか何だっていいんだ。
だって俺王子だもん。
そのまま華奢なジルの体を押し倒し、馬乗りになるとズボンの中に手を突っ込んだ。
熱く、硬くなったジルの自身が今にもはち切れそうに汁を潤ませていた。
ヒクヒクと頼りなげに震えるそれを数回扱き上げると、待ち望んでたみたいにいとも簡単に淫らな声が漏れ出した。
「…っんあぁ゙っ……」
その甘い喘ぎに、俺はこの上なく上機嫌で、軽く狂喜して言う。
「…しししっ…ほら、やっぱそうなんだ。
何されたって俺が欲しくて仕方ねえんだろ…?」
耳元でそっとずるい言葉を呟くと、ぞくりとジルの体が跳ねた。
「…服脱げよ。セックスしてやるから。」
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