†頂き物†
□仲良し兄弟、買い物へ行く
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「これとか京介に似合うんじゃないか?」
「……絶対にそれは兄さん向けだと思う」
優一は楽しそうに手に持っている服を京介の 体に合わせてみた。
一方の京介は絶対に似合わない服を合わせられ、若干疲れ気味だった。ただしここで言う「絶対に似合わない」というのは京介個人の考えである。
「それにしても京介と買い物に来るのも久しぶりだな」
「そうだね。それよりも早く選んだ方が……」
「冬は欲しい服がいっぱいあるんだよな〜」
優一はまたそこらにある服を物色し始めた。今日はたまたま優一と京介の休みが合い、どうせなら二人で買い物にでも行こうとなっただけの話である。
最初は京介は乗り気ではなかったが、優一に頼まれてしまえば断れるわけがない。結局押し切られ今に至るのだ。
「京介は何か買わないのか?」
「特にない……。あ、でも服買ったらちょっと寄り道させて」
「寄り道も何も、買い物なんだから何処に行ったっていいんだよ」
優一は面白そうに笑った。それにつられて京介も笑みを浮かべる。二人の周りはなんだか花が飛んでいそうなほど、和やかな雰囲気が漂っていた。
優一が温かそうなジャケットを見つけた。目を輝かせているので、一目ぼれで相当欲しいのだろう。
「これ買ってくるな!」
「はいはい、いってらっしゃい」
ジャケットを持って駆け足でレジに向かう兄の後ろ姿は、はしゃいでいる子供そのものだ。大人っぽいオーラとは真逆で、子供っぽいところもあるから見ていて飽きない。
優一が紙袋を持って駆け寄ってくる。
「お待たせ。じゃあ京介の行きたいとこに行こうか」
「うん。でもすぐそこだから」
歩いて五分ほどの雑貨屋。店を出て、本当にすぐに着いてしまった。
雑貨というかなんというか、キーホルダーがあったりぬいぐるみがあったり、とにかく色々おいてある。
店の雰囲気そのものは悪くないので、京介にとっては最近見つけたお気に入りであった。
「ここで何買うんだ?」
「ちょっと待って」
京介は店の奥に姿を消した。仕方ないので優一は入り口近くにある商品を見ている。
小さなマスコット人形、うさぎのぬいぐるみ、マグカップ、などなど。本当にたくさんの物が並べられている。
しばらくして、ようやく京介が戻ってきた。
「はい、兄さん。これ」
「……これ、キーホルダー?」
京介が差し出してきたのは金属でできたサッカーボールのついているキーホルダー。小さく紫の宝石のようなものがついていて、なんだか可愛らしいものであった。
「財布とかにつけといて。俺と、おそろいだから」
「え!?」
驚いてキーホルダーから京介に顔を向ければ、顔を赤くしている弟が優一の目の前に居た。
手に持っている財布には既にキーホルダーがつけられている。
「……いらない?」
「いる!ありがとう、京介!」
急いで財布にキーホルダーをつける。こんな時、器用な方で本当によかったと優一は思った。
優一が財布を見せながら笑うと、京介も嬉しそうに笑った。
仲よし兄弟、買い物へ行く
(普通の買い物さえ幸せなんです)