†捧げ物†

□春の日の剣城兄弟
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ぽかぽかとした暖かい陽気。

心なしか時間ものんびり流れているような気がしてくる、そんな春のある日。



今日は部活が休みらしく、早くから京介が来てくれている。


今回はお見舞いの品として、春らしい花を持ってきてくれた。





「俺が生けておくから」


そう言った京介が、全体のバランスを見ながら花を生けていく。


花を持ってきたときには必ずと言っていいほど京介が生けているから、手つきもこなれていて。



京介はセンスがいいんだよね。

京介の手によって生けられたものはどれも美しく、看護師さん達からも好評なんだ。



「……こんな感じか?」


作業していた手を止めて、自分が生けた花をもう一度じっくり見つめる京介。

春の可愛らしい花々を使っているけど、気品あふれる仕上がりになっていた。


「やっぱり京介は上手だな。凄く綺麗にできてるよ」


そうやって褒めてあげれば、京介は照れくさそうに笑った。



最後の微調整をして完成したものを、京介がいつもの定位置である窓際のテーブルに置く。


「今日は暖かいな」


京介が窓の外を見ながら呟いた。


「そうだね。……京介、窓を開けてくれないか?」

「わかった」



せっかくいい天気なんだから、ずっと閉めきってたら勿体無い。

そう思って京介に窓を開けてもらえば、すぐに暖かく爽やかな春風が吹き込んできた。


「……気持ちいいね」

「あぁ……」


春風に吹かれていると、なんだか穏やかな気持ちになってくる。

それは京介も同じようで、窓際に立ったまま春風が頬を撫でる感覚を楽しんでいるようだった。



目を閉じて、穏やかな表情を浮かべる京介。

風になびいてゆらゆらとポニーテールが揺れる。



今の京介は凄く絵になるなぁ……。




「……ねぇ、兄さん。外に出てみないか?」


見とれていたら、京介がこちらを振り返ってそう言った。


「そうだな。こんなに天気がいいんだし、外に出てみるか」

「なら、俺が車椅子押すよ」


京介は窓を閉めてから、俺が車椅子に乗るのを手伝ってくれて。


「じゃあ、行こうか」


そう声をかければ、京介がゆっくりと車椅子を押し始めた。
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