腐女子高生・Middle&Seasonモノ置き場3

□腐女子高生の6月の花嫁?
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「悩んでるのよ、兄君……」

6月某日、代官山高校2年1組の教室は、何故か無意味に張り詰めた空気だった

「クソ鬱陶しい梅雨時期だけど、ジューンブライドなのよね」

真顔で、斎は健人を見つめる

この、告白前の緊張感に似た何かに、教室にいた者は、嫌な汗を流す
いや、もう、いろんな意味で嫌な汗だ

よく考えたら、野郎共はまだにしても、斎は結婚可能な年齢だったと気付く

「ジューンブライドといえば、花嫁衣装よね
あたしはそのドレスで悩んでてさ……」

いや、それより何よりまず……



「お前、結婚すんの?」



誰もが思った事を、健人が代弁した
結婚式以外で、普通、女の子がウエディングドレスで悩む事はない

斎だって、腐ってはいるが女の子であって、ついでにお嬢様だ……腐女子だけど!(←ここ、重要)

そうなれば、内心穏やかじゃない人間が何人かいる

もしかしたら、知人友人のドレスの悩みかもしれないと、一縷の望みも、健人の頭を掠めた

「実は……うちにウエディングドレスがあるんだけどね?」

マジで現実的!?

俄かに、教室中がざわめいた
もしかしなくても、代官山誇るイケメン集団が、腐女子に敗退を期する瞬間かもしれない!

康人に至っては、食べていたおにぎりの具(鮭)を落としている
完治は固唾を飲んで聞き耳を立てて、誉はさっきから、本のページが止まっているし、渚は鞄から藁人形を出していた
しかし、一番緊張しているのは、斎の目の前にいる健人だ

斎の次の言葉を極度の緊張感で待つ





「あれは、鈴花に着せたいと思うのよ」





その一言に、海より深い沈黙が落ちた

咄嗟に、何の事か理解できない



「は?
お前のドレスだろ?何で鈴花?」



斎は頬に手を当てて困り果てた

「確かに、所有者はあたしだけど……
あれは鈴花に似合うと思うのよ
でも、結婚しないのにウエディングドレスを着たら、婚期が遅れるとか、結婚出来ないとか聞くでしょう?
あたしからしてみたら、婚期なんか有って無いようなもんだし、バツがいくつ付こうがどうでもいいんだけど……
鈴花は普通の女の子だし、そんな事言えないじゃない
けど、鈴花に着せたいのよ……あのドレス
どうしたらいいかしら?
兄君なら、何か妙案が無いかと思って……」

とりあえず、状況は理解した
理解はしたが、どう答えるべきだろう

見れば、康人は明らかに安心したようだ
今度はサンドイッチを食べている
完治も誉も渚も、何事も無かったようにしていた

つーか、何時もながら、欄外な思考回路してんな……

腐女子・斎は、常に欄外の解答を出して来る
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