腐女子高生・Middle&Seasonモノ置き場3

□腐女子高生の花嫁騒動?(誉の場合)
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ギリギリ、トンファーが震えた
押さえる誉の手と、殴りたい斎の腕が、トンファーを軋ませる

「売られたケンカは、高く買うわよ」

「フッ、力で俺に勝てるワケ無いだろ?」

確かに、斎と誉は体格も違うし、力技では斎に不利だ

「バカバカしいわね
あたしが大人しく従順になれるワケ無いわ
あたしに可愛い要素を見出だすのも、無駄以外の何でもない
無理な事をほざく誉ちゃんも、バカを見るだけじゃないの」

健人が止めに入る前に、斎の方が引いた
トンファーを納めると、女の子チームに振り返り、笑う

「あたしの密かな野望はね、皆に御祝儀を包む事なのよ♪
だから、いつかは、あたしにお祝いさせてよね♪
あ、でも、お願いだから、御祝儀の前に御香典包ませるような事にはならないで!!」

キッパリと言い切る斎
だけど、チーはツッコミを入れた

「うちらも斎に御祝儀包みたいけど、斎の場合、そのまま御香典になりそうだよね」

うんうん、満場一致で頷く



「そ、そんな事はっ、流石に……有り得るかも……」



まず、三次元男嫌いを何とかしなければいけない
そして、二次元との付き合いが変わるというのは……



斎に堪えられるワケが無い!!



皆に御祝儀を包みはするが、御祝儀を貰う事はない気がする
女の子達が持っている厚意も無駄にするのか……いや、それは凄く申し訳ない

「くっ……どこかに、三次元的下僕がいるなら、多少は話が違うものを……」

本気で苦悩する斎は、ハナから男嫌いを治す気なんか無いようだ
それでも、斎の懐に一度でも入ってしまった場合、男嫌いもバカらしくなるくらい、斎の警戒心も嫌悪感も無くなる
そんな事実を、A班の男性陣は身を持って経験しているのである



もし、雲雀を全部受け止める奴がいたら、もしかするかもしれないけどな



そんな事を、チラッと考えて、誉は案外、自分の器の小ささを感じた

……俺には無理だ

例え恋人だとしても、斎には付き合いきれない
斎は、いろんな意味で自分よりでかい
野郎のジレンマや劣等感を感じさせ、ストレスを与えるのは、斎の特技かもしれないとも思う
ある意味、斎は男より男気溢れた女の子だ

だけど、心強い支えになり得るのも斎で、多分、相反するモノに苛まれて、苦悩の末に爆発するだろう
斎の恋人や夫になる人間は、おそらくそうなると、誉は思う

「いろんな意味で難有りだな」

いっそ哀れむように言うと、斎はキッと誉を睨んだ

「……」

「むくれるなよ」

ぽんぽん、頭を撫でると、更に不満そうな顔をする

「あのね、斎♪
斎には、きっと素敵でカッコイイ相手がいるって思うよ♪」

キラキラなオーラを振り撒いて、鈴花が言う

「斎なら、ご両親の仕事の関係とかで、年収高くてイケメンな人と会う機会あるでしょ♪
絶対、斎に最高にお似合いな、現代版光源氏な人がいるよ♪」

斎の脳裏に、年収の高い三次元的イケメンの顔がゴロゴロと浮かんだ
パーティーとか何だとかで、カッコつける為に、親に引っ張り出された事は何度も有る
挨拶もしたし、話しもしたし……会う度に懇意にしてくれる年上もいる

きいなり黙り込んで思案顔の斎に、野郎達は嫌な予感がした

「鈴花、付き合うなら、お金じゃなくて中身が大事だよ」

「ナカムー、中身もだけど、価値観とか誠実さとかだって必要じゃない?
長い目で見たら」

チーの指摘もさる事ながら、野郎共は、女の子の恐ろしさを垣間見た気がした

「……いけない……三次元的イケメンって、揃って胡散臭い顔にしか見えないわ」

何気に、斎が一番酷かった
イケメン扱いされているA班全員を、バッサリぶった斬っている

「……でも……そうね……友人としてなら、信じるに足る人はたくさんいるけど……
恋人とか、それ以上では見られないわねぇ
あたし、そもそも結婚云々に夢は無いし、付き合える人と、一緒に暮らせる人は別だと思うし……」

リアルを考えてみたら、それは確かに言えるかもしれない

「でもでも、斎の場合は玉の輿に乗れる率は高いじゃない?」

「だよねだよね♪
不知火ちゃん、今から目は付けといたら?」

被服部の少女も、話しに乗っかった

「そして、あたしにもイケメン紹介して!!」

「って、ナカムー、それが本音でしょ」

「バレた?」

「バレバレよ
皆して人事だと思って……
そういう人達を見てると、夢も希望も無くなんのよ
あたし、玉の輿に乗るくらいなら、筏を漕いでる方がマシって思うわよ」

斎は頭からベールを取って、上げていた髪を下ろした

「えー、それじゃつまんなーい」

「ゴメンね♪つまんない結婚観に恋愛観で♪」

斎は何故か楽しそうに笑った
そのまま、被服室を出ていく
戸口で振り返り、ヒラリと手を振った

「散歩して来るわ
今なら、何か良い言葉が出て来そうだから♪」

斎の姿が消えた後、ナカムーがしみじみ口を開く

「お嬢も大変なんだねぇ」

「普段は忘れてるけど、そういや斎はお嬢だったな」

健人は本気で忘れていたらしい
誉は一度斎の出て行った扉を見て、また読み掛けの本を開いた





→あとがきという名の言い訳
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