family
□知らない
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『言えない…。』
この言葉を言った時点で私はもう嘘をつけない。
だったら嘘なんてつかずに言わなかったら良いんだ。
圭「なんで?どんなことでも俺達は聞くよ?」
『ホント…?ホントに聞く…?』
ああ…私、何言ってんだろ。
大「うん。だってあいりは大切な家族の一人だから。俺達の中では存在が大きい。存在が大きい分、俺達も大きい心で聞くよ。」
大貴にいの言葉で一瞬、言ってしまいそうになった。
でも堪えて、言わなかった。
『もし、その話が残酷なことでも?』
光「え・・?」
『もしも、もしもだよ?私が、クラスの女子に苛められてるとする。』
もう苛められてるんだけど。
龍「苛められてるの?」
『ううん、もしもだよ。その女子に水をかけられたり…殴られたり。そんなこと話してもさ、事が良くなるわけではないでしょ?でも結局は言ってしまう人が多数。そんな人はただ自分の弱い心が出てしまっただけ。私はそんな弱い心なんていらないんだよ。強い心を持ちたい。だから言えない、言わない、言いたくない。』
自分の弱い心。
そんなの皆に何回見せてきたことか。
だからもう見せたくない。
宏「そんなのはただのプライド。強い心とは言えないよ?」
『プライドなんかじゃない!そう思わない?私は弱い心を持つために生まれてきたんじゃないの!強い心が欲しい!強い信念が欲しい!そう思うのはプライド?皆、何も分からないくせに!私の気持ちなんて分からないでしょ!?』
気づいたらそんな言葉を発してた。
数秒遅れでやっと、自分が言った言葉の酷さが分かった。
どうしていいかわからず、その場で私は涙した。
『ご…ごめんなさい…!こんなこと…言う、つもりじゃ…なかった、のに…っ!』
最近の私はちょっとしたことで怒る。
どうしてかな。
どうして皆にあたっちゃったかな。
ふと視界が白のシャツでおおわれた。
私より少し高い身長。
ほのかに香る洗剤の匂い。
・・・・大貴にい。
大「わかってる。あいりがそんなこと言うはずがないもんな。ごめんな、分かったような口聞いて。」
『ちが…悪いのは、私…なの…っ!』
悪いのは私。
皆は誰よりも分かってくれてる。
そんなこと、私もわかってる。