family
□負けない
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少し立ち尽くしていると、どこからか笑うような声が聞こえてきた。
まるで、嘲笑うかのような。
それは私を悲しみへと誘った。
決して乗り越えることのできない悲しみへと。
辺りを見回すと、後方で今までずっと聞いてきたなつかしいような声。
…家族の皆。
宏太にい達だった。
近づいて声を掛けようとするけど、皆と私の差は縮まらない。
逆に声量だけが大きくなっていった。
それは、結構な遠くにいる私でも十分に聞こえるほどだった。
なんとなく、皆の会話を聞いてみる。
後悔することなど気にせずに。
宏「なあ…正直言ってあいりいらなくないか?弱虫だし、すぐ泣くし。」
龍「分かる。レイプされたからなんだっての。俺らは知ったこっちゃねーし。」
雄「てかさ、目障りだよね。小さいからちょこまかと動いてさ。」
侑「あれいい加減腹立つ。あいりのこと好きとか言ってるけどまったくの嘘だからね。信じてるってバカらしい。」
慧「ホント。俺なんであんなのと部屋が同じなんだろ。マジで邪魔だし。」
涼「てかなにこの家族に生まれてきてんだよ、って話。あいついらないんだから生まれてこなくったって良かったのにな。」
裕「消えればいいのになー。あんなの期待してても無意味だし。」
大「期待裏切るだけだもんなー。確かに、消えればいいのにな。」
光「死ねばいいのに。あ、俺が殺してあげようかっ!あっはっはっはっは!」
圭「光にいグロいから。」
聞いてるだけで涙がとまらなかった。
あの宏太にい達の笑顔は嘘なの?
味方だって…真剣に言ってくれた。
私はやっぱりいらなかった。
家族にも友達にも必要とされてないって…いる意味ない。
もう私には家族が信じられないでいた。
その場にいたたまれくなり、夢中でドアから飛び出した。
すると、また出てくるのはどこまでも続く暗闇。
分けがわからず、無我夢中でどこかに走った。
走ってる場所がどこだか分からない。
地面か道路か分からない。
草原か河川敷か分からない。
ただ一つ言えること、ここは、ただの空間だということ。
宙を走ってるか、地面を走ってるかわからない真っ暗な空間。
怖いけど…そんなことさえ忘れてただひたすらに足を早める。