しょーと

□犯罪者
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まてまてまてまて落ち着け、落ち着け俺。

現在時刻、朝6時42分俺にしては随分遅い起床ってそうじゃなくて。

もう一度確認しよう、現在時刻6時42分。身に覚えのある酷い頭痛、吐き気。体は怠いがどこかすっきりしているような感じがする。怠いのにすっきり?なんか可笑しくね?しかし今はそんなことよりもっと重大か事があった。場所、俺の部屋のベッドの上。隣には、俺の可愛い弟子の、アリババ。

俺は裸。アリババも裸。


…………なんか、可笑しくねぇ?


嘘だろおい誰か嘘だと言ってくれ。と、叫びたくなるのをどうにか必死に押さえて心の中だけに留めておく。再度チラリと横をみればスヤスヤと、気持ち良さそうに寝ているアリババ。は、裸。布団から見える白い肌に散らばっている鬱血点を見て頭を抱えたくなった。いや、もうすでに抱えていた。最も考えたくない、一番最悪なケースが頭をよぎる。否定したいが今の状況から推測するに、これは明らかな。

(ちょ、ま、まてまてまてまてどうしてこうなった!?)

とりあえず痛む頭を必死に働かせて昨日の出来事を思い出す。昨日もいつものようにアリババと訓練をして、そういや昨日のアリババは調子が良かったからいつも以上に筋がって違う違う脱線してしまった。とりあえず昨日はいつも通りに訓練して、いつも通りに終わって、いつも通りに酒場に行って、それからアリババといつも通り…よりも少し多く酒を飲んでしまって。

(………やべぇ、その先が思い出せねぇ。)

どれだけ考えてもこの最悪な状況を確実に否定ができる出来事が思い出せない。寧ろ考えれば考えれるほどなんだか思い出してはいけないものまで思い出してしまったような気がした。ベッド、裸、鬱血点、そして酒ーもう考えられることは一つしか無い。

(ーえ、マジで?マジで俺やっちまったのか?)

つまりは、俺は可愛い可愛い愛弟子を、抱いて…

そこまで考えたところで隣の温もりがモゾリと動いた。ハッと我にかえる。おそるおそるそちらを見れば起き上がって眠たそうに目を擦っている、全裸の、アリババ。は、まだ意識が朦朧としていて覚醒しきれて無いのかどこか遠くを見つめている。「…アリババ?」と声をかければゆっくりとこちらを振り替えって、寝起き特有のかすれかかった声で返事をされた。しかしもしこの状況が本当のものならばもしかしたらかすれかかった声も、まさかそれが原因で…と考えていたらようやく今の状況が理解できたのかじわじわと顔を赤くしてバッと布団を胸元まであげた。女子みてぇな事するなぁと、どこか的はずれな事を思えばアリババは「な、な、ぇあ…!?」と言葉にならない疑問をうかべている

「し、ししょ、ど、して、なんで、これ、」
「とりあえず落ち着けお前。」

混乱しているアリババを宥める。俺は起きてから随分たっているため、だいぶ落ち着いたがコイツは違うだろう。現状分析さえままなっていないようだ。顔を真っ赤にして何かを言おうと口を開くも、何から話せば良いのかわからず結局口をもごもごとさせているアリババがおかしくて思わず吹き出しそうになるが、耐える。そうしていまだに狼狽えているアリババに、頭をかきながら「あー、その、」と切り出して正座をした。驚いているアリババに構わずそのまま頭をさげて

「………すまん」
「や、ややややややや、やめて下さいよ師匠!!そんな、まるで、」

と、そこまで言って口を閉じる。その先が言えないのであろう。こんないたいけな少年を俺は。そう考えると先程より大きな罪悪感が生まれる。正直なところもう否定をするのは止めた。どうあがいてもこれは逃げられない。もう一度謝罪をするとアリババはついに耐えきれなくなってきっと否定をすべく膝立ちになったーーーその時。

「っひっ!?」
「?ど、どうした?」

膝立ちになりかけていると言う変な体勢のまま妙な声をあげてピシッと固まってしまったアリババを見て不安になる。何も答えないアリババにもう一度声をかけようとしたところで気づいた。アリババの顔が青い。先程まで赤かったのに忙しいやつだと何気無くアリババの足元をみて、俺も固まった。

アリババの足元にできている、白い水溜まり。正確にいえばアリババの尻から流れ出ている、白い液体。その生々しさとか色んなものが飛び交うがそのなかで俺の頭の大半を占めていたのは

「……多すぎだろ。」

思わず声に出してしまう。それに過敏に反応したアリババがこちらを涙目で睨み付け、「し、ししょうのせいじゃないですかぁっ!!!」と半泣きになって言う。いまだに尻から流れ出ている液体を見てついに逃げられなくなったとわかったアリババははぁ、とため息をついてそのまま座り込んだ。そのまま動かなくなってしまったアリババに「大丈夫か…?」と、答えのわかりきった質問を投げ掛ければアリババは上目使いにこちらを見てきた。鎖骨のくぼみ、白い肌、下に広がる水溜まり、困ったように眉をひそめて頬を赤らめていて。

思わずムラッときてしまってしまえば後はもう何もかもがどうでもよくなってしまった。



犯罪者

(とりあえず考える事を放棄した俺はその唇に口付けた。)

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