しょーと

□シンドバッドさんと!!
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なるべく足音をたてないよう廊下をあるく。そろりそろりと向かった先は通いなれた部屋。ごくりと唾を飲み込んで、バァン、と大きな音をたてて大きな扉を開けた。

「シンドバッドさん!!トリックオアトリート!!!!」
「・・・え?」

入った先に見えた顔は驚きと疑問に満ちていた。自分予想通りの反応にふふんと笑ってから大股で近づく。色々突っ込みたそうな顔をしている。まあ当たり前だ。多分シンドバッドさんは、今日のことを知らない筈だ。今日が、なんの日か。

「えっと、アリババ君、今なんて言ったんだい?」
「トリックオアトリート、ですよ。」


ふふんと自慢げに言えどもシンドバッドさんはまだ不思議そうな顔をしていた。やはり。シンドバッドさんは今日、ハロウィンの事をしらない。予想的中だ。そして俺はハロウィンの説明をすべく口を開く。

「今日はハロウィンって言う日なんですよ。とある国では今日はまぁ、特別な日で、トリックオアトリート、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、って言ってお菓子を貰いに回るんです。」
「ほぉ・・・そんな行事があるのか・・・知らなかった。」
「でしょう?と言うことでシンドバッドさん、トリックオアトリートです!!」

ぱっと両手を差し出して笑顔でもう一度いった。我ながらずいぶんずるい事をしていると思う。だって知らないのだから防ぎようが無いのだ。得意気に笑ったが、ここで予期せぬ出来事が起こった。シンドバッドさんは少し考えた後に机の引き出しをすこし漁ったかと思えば、袋に入ったクッキーを取り出したのだ。そしてそれを俺に「お菓子ならなんでもいいんだろう?」と言って差し出した。

(しまった。自室を狙ったのは間違いだったか。)

自室ならお菓子をどこかから調達することは出来ないと考えていたが、まさかお菓子があるとは。考えたことが裏目に出てしまった。なんたることだ。失敗した。

「随分悔しそうだね」
「はい・・・まさかお菓子持ってるなんて・・・」

予想外でした。と言えばシンドバッドさんは苦笑する。残念だなぁと思いながらシンドバッドさんの手にあるお菓子を貰おうとしたーーが、何故かそのお菓子は上に挙げられてしまう。え?と思ってシンドバッドさんを見れば意味深な笑みを浮かべていた。なんか、嫌な予感が。

「ところでアリババ君、お菓子を貰えない場合にはどうなるんだっけ?」
「え、ですから、イタズラ・・・」
「そうだね、じゃあ」

「アリババ君はどんなイタズラをしてくれるのかな?」
「・・・・・・・・・・へ?」

あまりにも思考から反れた事を聞かれて間をたっぷりと開けてから思わず間抜けな声を出してしまった。シンドバッドさんは先程の笑顔のままだ。何も言えない俺に構わずシンドバッドさんは続けた。

「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、さて、アリババ君は俺に何をしてくれるのかな?」
「え、や、あの、」

思わぬ事態に混乱してしまった。まさか、そんな事を聞くなんて。困り果てる俺に対してシンドバッドさんは嫌に冷静だ。くそ、イタズラの内容を聞かれるとは。正直に言うと考えていなかったのだ。相手がひっかかる事を前提にとった作戦だったが、肝心な部分を忘れていた。(しかたない、だってシンドバッドさんの困る顔を見たかったのだ。)どうしようどうしようと混乱し、それにシンドバッドさんの視線が加わって、


「・・・・・・・・し、シンドバッドさんを襲っちゃう、とか?」


とんでもない事を言ってしまった。

しまった、と思えどもう遅い。シンドバッドさんは一瞬驚いたが、すぐに嫌な笑みにかわって。

「そうか、じゃあ」


お菓子はあげられないな


そう言った瞬間、シンドバッドさんの手にあったクッキーはバキリと音を立てて無惨にも砕かれてしまった。




シンドバッドさんと!!


寧ろイタズラさせられちゃいました

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