しょーと

□ジャーファルさんと!!
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「!!アリババ君。」
「・・・・・あはは・・・ばれちゃいましたか。」


静かな資料室の音はぱらぱらとページを捲る音と微かな呼吸音だけで構成されている。そんな資料室にキィ、と静かにドアを開ければやはり、中にいるジャーファルさんには気づかれてしまった。まぁ元暗殺者(今でもたまにその顔がでるが)だったと言うことで気配に敏感であろう事は予測できていたのでもとより気づかれずに入るという事は期待していなかった。かつかつと足音を立てて床に座っているジャーファルさんの隣に向かい座った。

「どうしたんですか?」
「あ、いや、少し調べたい事が・・・」

これは嘘。調べたい事なんて本当はない。本当の目的はただ一つ。しかし入ってきた事がばれてしまったため次のタイミングを見計らうしかない。俺は適当な資料を本棚から取り出してジャーファルさんの隣で読む、ふりをする。そう、次のタイミングを逃さないために。
今日は10月31日のハロウィン。「トリックオアトリート」と言ってお菓子を貰い、持ってない場合はイタズラを受けるーそれが許される日。だからこそ、俺は今日、いけないことだとわかっていながらも、ジャーファルさんに仕掛けるつもりだ。だっていつもジャーファルさんのほうが上手だから、今日くらいは俺だって。ちなみにイタズラの内容はー、まだ考えていない。しかし仕掛けられなかったらもともこもない。慎重、慎重にと考えていたがなかなかタイミングが掴みづらい。ので、もういおう、うん。そう思って口を開いた。

「ジャーファルさん、」
「トリックオアトリート。」
「・・・・・・・・・へ?」

・・・が、なぜか俺から出るはずの言葉はジャーファルさんの口から。何故、どうしてジャーファルさんがハロウィンを?

「昔読んだ書物に書いてあったんですよ。アリババ君が何だかそわそわしていたので。」

「やっぱりそうでしたか」とにこやかに笑うジャーファルさんの方がどうやら一枚上手らしい。しかしそこで諦める俺じゃない。

「・・・どうぞ。」
「!持っていたんですか?」

すっと取り出したクッキー(どこからかは聞かないでくれ)をジャーファルさんに渡す。部屋を出るときに念のためと思って入れておいたのはどうやら正解だったらしい。ジャーファルさんは「まさかアリババ君が持ってるなんて・・・」と苦笑していた。そんなジャーファルさんににんまりと笑う。

「ふふっ今回はアリババ君に一本とられましたね。」
「あはは、すみませんジャーファルさん。と言うことでトリックオアトリート、です。」

そういうと両手を上げて「すみません、ありません。」といって笑った。よっしゃあ、と心の中でガッツポーズをとる。するとジャーファルさんは降参のポーズから手を下げて俺にいった。

「煮るなり焼くなり、どうぞ?」
「・・・・・・・・・あ、そうか。」

イタズラをしなくてはならないことをすっかり忘れていた。しかしイタズラをしたかったから取った行動ではなく、ジャーファルさんに勝ちたかったからで。うーんうーんと頭を唸らせて、ひとつの案が浮かぶ。それはたいへん少し恥ずかしい気がするが、今の俺なら何でもできる、気がする。ので、ジャーファルさんの方を向いて、床に手をついて、ぐっと顔を近づけて。
触れるだけの、キスをした。

「・・・・・・・・こ、今年はこれくらいで、許してあげまうぇ!?」

やったはいいもののやはり恥ずかしくなってしまい目を剃らして早口で捲し立てていたら突然ジャーファルさんに腕をひっぱられて、キス。しかも先程のなんか比にならないくらい、濃厚な。驚いて変な叫び声をあげてしまったが、今はそれどころではない。混乱しているうちにどんどんと深みにはまっていって、酸素を欲している脳は痺れてきた。そうしてパタリと床に押し倒される。

「・・・ふ、・・・っはぁっ・・・はっ、ちょ、ジャーファルさ、何、」
「さっきのは反則ですよ。」

そう言って俺の生理的に出てきた涙を拭い取って、額にキスを落とされた。訳もわからなくて細やかな抵抗を試みている俺に、囁く。

「お菓子もほしくて、アリババ君も欲しい、何て、ダメですか?」

そんなこと言われてしまったら、何も言えなくなってしまう。






ジャーファルさんと!!


欲張りな彼に食べられちゃいました。

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