しょーと

□マギと!!
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まずい。非常に不味い状況だ。路地裏、人は居ない、そして極めつけには

「よぉアリババクン」
「・・・・・・・ジュダル・・・・・」

何故だ。何故こうなった。今日は師匠との稽古もなくて、暇だったからシンドリアの市街地でも見にいくかと思って市街地にいって、特に宛もなくふらふらと歩いていたら突然首の紐を思いっきりひっぱられて。ぐえぇぇと言うなんとも表現しがたい奇妙な叫び声は市街地の賑やかさにかきけされた。そして気づけば人通りが少ない、むしろ皆無な路地裏。目の前にはあの、ジュダルがいましたとさ、めでたしめでたし。

(・・・・・・・ってめでたしめでたしじゃねぇよ!!っつか何でこいつここにいんだ!?)

俺の視線から気持ちを汲み取ったのかジュダルは「あぁ、なんでここにいるかって?」と話し初めた。

「今日はあれだろ?ほらハロ、・・・・・?」
「・・・・・・・ハロウィンか?」


おそるおそる言えばどうやら合っていた。どうやら煌帝国で小耳に挟んだとか。しかし、まだニコニコとしているジュダルが何故ここに居るのかが皆目検討もつかない。だいたいジュダルは敵だ。正直今だってぶっちゃけめちゃくちゃ警戒している。

「まぁそう身構えんなって。今日はハロウィンだろ?だからぁー」
「・・・・・・・?」

トリックオアトリート、そう言われて思わず固まった。がしかしすぐに理解する。用はハロウィンという知らない行事を楽しみたいらしい。なんだ以外と可愛いとこあんじゃねーかと思っていたらそれも汲み取ってしまったのか不機嫌なオーラが発せられたのがわかる。

「おいおいアリババクン、今がどんな状況かわかってんのか?」
「う・・・」

そうだ。今俺の目の前に居るのは俺なんか一瞬で殺せてしまうジュダルなんだ。ごくり、と喉をならしてキッとジュダルを睨む、と彼は一瞬きょとんとしたあとに口角をあげた。あれ、なんだか嫌な予感が。そして嫌な予感というものはだいたいよく当たるもので。ジュダルは俺の横の壁に手をついて、あろうことか股の間に足を割り込ませてきたのだ。

「は、んな、に、!?」
「お菓子を貰えない場合には、どうするんだっけなぁ。」
「・・・・・・っ!!」

まさか、と思っている間にぬるりと首筋に何かが這って、思わず「ひっ」と息を飲んだ。ジュダルは楽しそうに笑ったあとに「おとなしくしてればすぐ終わらせてやるよ」という物騒な言葉まで言って。

「ひ、やめ、っ・・・・・・」

あ、もうだめだ。そう思った瞬間、俺の左側、つまり大通のほうから何かが飛んできて、俺たちの右にあった気箱が砕け散った、いや、燃えてしまった。

「・・・・・・へぇ、もう来たのか。はやかったなぁ?」

左を見ればそこにいたのは見慣れた小さな姿で。俺は安心と喜びで名前を叫んでしまった。

「っアラジン!!」
「・・・・・・アリババ君に、何したの。」
「そんなおっかねぇ顔すんなって。まだ何もしてねーよ」

アラジンの思わぬ助けと謎の低い声(そのなかには明らかに怒りがはいっていた)に狼狽える俺とは反対にジュダルはにやにやとしながらアラジンを見ている。アラジンがキッと睨めばジュダルは肩を竦めて俺から離れた。

「じゃー今日はこれで帰るわ。」

またなーとなんともマイペースに帰っていったジュダルを見てへなりと地面に座りこむ。アラジンはそんな俺を見て駆け寄ってきた。

「大丈夫かいアリババ君!!」
「あぁ、わりい、大丈夫だ。ありがとうな。」

アラジンの助けを借りながらもなんとか立ち上がる。本当に助かった。もしあのままアラジンが助けにこなかったらーと、そこまで考えてゾッとした。危ない、ジュダルは危ない奴だ色んな意味でも。

「本当にありがとうなアラジン、助かったぜ。」
「ううん、いいよ。だって友達が困ってたら助けるのが当たり前だもんね!!」

にこりと笑うアラジンが神に見えた。思わず目に涙を浮かべる。衝動のままアラジンに抱きつけば笑いながら抱きしめ返してくれた。

「じゃあとっとと帰ろうぜ。」
「うん!!」

そのまま大通りに歩き出そうとした、が、グイッと引っ張られた。誰に?アラジンにだ。思わず尻餅をついてしまい、なんだと驚いていたらアラジンは反対の手を差し出してこういった。

「アリババ君、トリックオアトリート」
「・・・・・・・・おぉう?」

先程と似たようなフレーズを聞いたが。なんだ最近はみんなしってんのかハロウィン。しかしアラジンには悪いが残念ながらお菓子は持っていない。

「わりいなアラジン、今持ってねぇんだ。」
「・・・そっかぁ。」

「だから」と続けようとしたら「じゃあイタズラ、だね」というアラジンの声が聞こえて、え?と思っていたらアラジンが突然しゃがんで、俺と同じ目線になったかと思えば唇に一瞬の温もりが。唖然としている俺を置いて数歩歩いて、振りかえる。

「さ、いこうよアリババ君」

さも何事もなかったように話されてしまって、行ってしまうアラジンを追いかける事しかできなくて、っつか今のって、

「・・・・・・・・・・・・・・・・え?」





マギと!!

結局振り回されっぱなしでした




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