しょーと

□メリークリスマス!!
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「ちょちょちょちょ待ってください何ですかこれ!!」
「大丈夫アリババ君なら似合っていると思うよ」
「お願いします会話してください!!」

どうして、どうしてこうなってしまったんだと頭を抱えたくなった。事の始まりは、シンドバッドさんの一言からだった。







「今日はクリスマスだな!!」

八人将の方達と、食客の俺たちを呼び出して声高らかにシンドバットさんはこういった。確かに今日は12月25日。行事好きのシンドバッドさんなら触れるであろうとは思っていた。ジャーファルさんに「アンタ、まだ仕事終わってないのに」としかられているシンドバットさんを苦笑いしながら見ていたら隣にいるカシムがぼそりと呟いた。

「……くりすますってなんだ?」
「…え!?」
「カ、カシムお前知らねえのか!?」

そのつぶやきを聞いたヤムライハさんと師匠は驚いていたが、確かにスラムで暮らしていたんだから仕方ないのかも知れない。が、カシムがいってから続けざまにモルジアナとアラジン、そして白龍までもが口々に「知らない」と言っていた。モルジアナは旅の途中の商人から、白龍は姉の白瑛さんから少しは聞いていたもののあまりよく知らないし、アラジンに至っては名前すら聞いた事がないらしい。確かにアラジン達も知らなくて当然かもな。

「クリスマスってのはな?まぁ堅苦しい説明は抜かすけど、要はおめでたい日だからサンタさんがよい子にプレゼントをあげますよって日だ。」
「サンタさん?」
「プレゼントをくれる人だよ」

ごちそうが食べれるとか、クリスマスツリーのこととかを話してやるとアラジンは「わあ!!なんだか素敵な日だねえ!!」と喜び、モルジアナもかすかに目を輝かせていた。すると事を見守っていたシンドバッドさんが「さて」と話を切り出した

「クリスマスも分かったことだし、これからクリスマスの準備をしようじゃないか、と言いたいところなんだが」
「え?」
「実はもうしてあるんだ」
「アンタ仕事もしないで何やってんだ!!」

ジャーファルさんによってがくがくと揺さぶられて三人に見えるシンドバッドさんは揺れる声で必死にジャーファルさんを説得していた。ようやくマスルールさんに止められたあとシンドバッドさんは一つ咳払いをしてから「まあ来てみなさい」と歩き出した。首をかしげながら、ジャーファルさんは何か物騒な言葉を呟きながらついて行ってみれば、そこには大きなクリスマスツリーがそびえ立っていた。その大きいことヒナホホさんの7倍はあったと思う。きらきらと光るたくさんの装飾に、一番上に飾られている大きな星の飾り。正直な話、かなり興奮していた。バカみたいにアラジンと「スゲー!!」とはしゃぎまくる。白龍も感嘆のつぶやきをもらし、モルジアナもこれまた目を輝かせ、カシムでさえも目を張っていた。八人将の皆さん(その中にはもちろんジャーファルも含まれている)も見とれていた。

「すごいですシンドバッドさん!!」
「おっきいねぇアリババくん!!」
「よろこんでもらえて良かったよ。勿論夜には料理も用意してあるよ」
「うおおおお!!」

「さて、あと残っているのはひとつだね」と言ったシンドバッドさんに首をかしげた。こんな豪勢な準備をしてなお何が足りないのだというのだろうか。そんな俺達の考えを汲み取ったのかシンドバッドさんは笑いながら紙袋を差し出してきた。疑問府を浮かべる俺に「あっちのカーテンで着替えて来なさい」と言う。そういわれた俺は何も考えずにカーテンの方へ向かってしまった、今思えば、あんなに良い笑顔だったんだ、何か少しは疑うべきだった。

俺は紙袋の中を見て驚愕に声が出なくなることになる



「いや、ちょ、本当勘弁してください!!」
「良いからほら、出てきなさい」

何の事かわからないであろう外の人達は疑問と、好奇心の滲んだ声をあげている。が、こちらとしてはそんなことで済まされる状況では無かった。中々出てこない俺(ちなみに中にはいっていたソレは着た。なぜなら外に出してあった脱いだ服を回収されてしまったからだ。大人ってずるい!!)に痺れをきらしたのかシンドバッドさんが強引に俺をカーテンの中から引きずり出した。抵抗しようにももう遅い。そもそも相手はシンドバッドさんだ。抵抗するほうが間違っていたのだ。そうしてあっという間に引きずり出された俺は皆の前にその醜態を晒すことになった。真っ赤な生地、裾やらにつくふわふわとした白い綿。ようは、サンタクロースの衣装だ。しかし、女性のもの、だが。裾の長さは膝上10cmほど、裾から出ている足に包まれる黒いニーハイソックス。完全に女性ものだ。男としてこの格好はいかがなものかとおもう。あまりにも短い裾をグイとひっぱった。羞恥で真っ赤になっているであろう顔をうつむかせる。穴があったら入りたいという言葉の意味を痛感した瞬間だった。軽蔑と哀れみの眼差しを覚悟して恐る恐る前を見れば、それは予想もしない状況だった。

皆、目が、輝いて、る。

予想外な表情に固まっていると周りが口々に「アリババ君、すっごく可愛いよ!!」「おー、馬子にも衣装だな」「うん、やはり俺の目に狂いは無かったな」等の褒め言葉を投げ掛けた。(いや正直褒められてもあまり嬉しく無い状況なのだが。)しまいにはモルジアナまでもが「アリババさん、似合ってますよ」と滅多にしない笑みまで浮かべるのでやるせなくなってしまった。

「というか、なんでこんな格好させるんですかシンドバッドさん!!」
「見てわかるだろう?サンタだ。アリババ君には是非ともサンタ役をやってもらおうと思ってね」
「だからって、こんな、女性ものじゃなくても・・・」
「それはまぁ、気にしないでくれ」

「そこが一番重要なんですよ!!」と叫ぶ前にシンドバッドさんが言葉を上乗せしてきたので口の中で噛み潰す。するとアラジンとモルジアナがキラキラと輝いている面持ちで駆け寄ってきた

「かわいいよアリババ君!!ね!!モルさん!!」
「はい」
「いや、なんか凄く複雑な、ひっ!?」

突然ぺらりとスカートを捲られて声がひっくり返った。その瞬間にしん、と静まりかえってしまったのだが、今の俺はそんなことを気にしている余裕はなく、後ろにいるであろう捲った奴のほうを勢いよくむいた。

「てんめ、カシム何すんだよ!!」
「あぁ、悪いなんか捲りたくなって」
「なんかで捲るな!!」

きゃんきゃんと言い合っている俺たちの間に突然何かがわりこんできて、見ればそれは顔を真っ赤にしている白龍で。何故かぷるぷると震えている彼は俺を庇うようにカシムの前に立ちはだかった

「っ、カシム殿、貴方って人はなんてことを・・・!!」
「あ?」

わなわなとしている白龍とカシムの間に「まぁまぁ落ち着けよ」と入ったのは師匠だった。よくわからないが怒っている白龍は口をぱくぱくとしながらカシムの方を指差して、そして何故か頭を抱えてしゃがみこんでしまった。ぽん、と白龍の肩を叩くアラジンの表情はどこか哀れみと共感を含んでいた。師匠は意味がわからないと視線を向けた俺の頭を撫でてから「しっかし良く出来てんなァ」と言いながら衣装をいじっていると、次に間に割って入ってきたのはジャーファルさんだった。

「ちょっとシャルルカン、いつまで触ってるんですか」
「え?あの、ジャーファルさん?」

ぎゅうとジャーファルさんに半ば抱き締められる(というか抱き締められている)形になった俺はその腕の中で身じろぐも抜け出すことは不可能に近かった。すると次はシンドバッドさんが「お前こそいつまでアリババ君を抱き締めているんだ」と俺をジャーファルさんと挟む形で抗議をしはじめてややこしくなってきた。

「だいたい俺が出した企画なんだ俺が優先されるべきだろう」
「はぁ?なにいってるんですか貴方ほとんど無理矢理だったじゃないですか」
「というかアリババ君は僕たちの物だよ!!」
「アラジン殿、それはいただけない発言ですね」

しん、とはりつめる空気。

どこかでコングが鳴った気がした。

それと同時にミシリと床がなる音、次に地面を強く蹴る音、最後に何故か強い風と誰かに抱えられる感覚がして、みればモルジアナの顔があって、そこではじめて俺がモルジアナに、所謂お姫様だっこをされているのがわかった。(ちなみに隣にはアラジンがいる。つまりモルジアナは俺とアラジンをいっぺんに抱えているのだ。)

「ええええええちょ、」
「アリババ君は渡さないよ!!」

どんどんと離れていくスタート地点、流れる景色に息を飲んでいたら突然腕に何か巻き付いて、えっと声をあげた頃にはもう釣り上げられていた。盛大に。アラジンとモルジアナの声が聞こえて、腕を見れば赤い紐。まさかと思ったあと、ふわりと抱き止められていた。見上げればやはり銀色の髪。

「じゃ、じゃーふぁるさん」
「ふふ、ごめんなさいね、でも今回ばかりは譲れないので。」

にこりと笑いながらくるりと方向転換するのでどこにいくのかと訪ねれば「私の部屋です」と言われた。表情は爽やかな笑顔だが、その笑顔に含まれる黒い何かがかいまみえた俺は小さく悲鳴をあげて逃げようとした、その時。次は遠くから何かが近づいてきて、あっというまにそれに連れ去られた。次はなんだと見てみれば、腰を掴んでいる鋭利な爪がみえて、それが鳥の足だと分かった。そして誰の仕業かも、同時に分かった。

「ピスティさん!?」
「あったりー!!」

上から軽やかな声とともにひょっこりと顔をだすピスティさんは。「モテる男はつらいねー」と明らかに労りなどこれっぽっちも含んでいない、むしろ楽しそうな声をかけてきた。こっちは困っているというのに。そしてここでふと、まさかピスティさんもこの謎の争いに参加しているのだろうか。いやしていなくても面白いからとりあえず、なんて軽い理由でも参加しかねない。と考えてゾッとしたが、上からまた「安心してー」と声が降ってきた

「私達は、アリババ君を保護しに来ただけだからー」
「え、保護・・・って、私達?」
「うんー、あ、いたいた。おぉーいヤム!!」

良く通る、ピスティさんの金属器の綺麗な笛の音が聞こえたと思ったら徐々に高度と速度が下がり、俺はまた無事に地面とご対面することができた。そういえばピスティさん、ヤムライハさんの名前をよんでいたような。すると後ろから俺達を呼ぶ声がして、振り替えればそこにはやはりヤムライハさんがいた。と、そういえば先程の質問がまだ消化されていない。

「あの、保護って・・・」
「ああ、それなんだけど、今のままでも面白いんだけど、これ以上はちょっとまずいし、アリババ君にも迷惑かけちゃうからねー」
「ごめんねアリババ君」
「あ、いや、全然」

「大丈夫です」、そう言おうとしたその時、右腕をひかれて、なにかと思ったら見慣れた褐色肌が見えた。

「し、師匠!!」
「おい、なに俺の弟子拉致ってんだァ?」
「なにって、アンタみたいな奴からアリババ君を護ってあげてるのよ」

来てそうそうヤムライハさんと言い合いを始めた師匠。いつのまにかヤムライハさんも俺の左腕を掴んでいて、そうしてそのうち二人の言い合い、というには、少し、幼稚になっている喧嘩は勢いをましていき。遂には師匠は俺の右腕を、ヤムライハさんは俺の左腕を引っ張り始めた。さながらおもちゃを取り合う3歳児だ。そんなことは口がさけても言えない、が、これは少しばかりキツい。師匠もヤムライハさんもそれなりの力で引っ張っているので、俺の関節がミシミシと音をたてはじめた

「いいいいいいいいたたたたたたたたた!!!!!痛い、痛いです離してください!!」
「だいたいお前、男が居ないからってアリババに走るなこのショタコン!!」
「な、なんですってぇぇぇ!?違うわよ!!だいたいアンタも女に飢えすぎてアリババ君に手ぇ出してるんじゃないわよこのホモ!!」
「うわあああああどうして誰も話を聞いてくれないんだ!!」



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