しょーと

□舞い落ちる一等星
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「あの、すみません、お時間いただけますか?」

そう言った時のアリババ先輩の顔はそれはそれは驚きに満ちていた。






12月25日のクリスマス。普段よりもきらびやかに輝く町はやはり活気づいていた。楽しそうな親子の声、聴いたことのあるクリスマスソング、そして恋人達のどこか甘い雰囲気に満たされる街で男二人が歩いていていかがなものかとは思うが。まぁ恋人にはかわりないし、良いかとどこか調子外れた事を考えていた。

「珍しいな、お前が進んで寄り道なんて。」
「アリババ先輩が不真面目なだけですよ」
「お前なぁ・・・」

と言いつつも彼は真面目な方なのだが、彼の親友であり幼馴染みであるあのガラの悪そうな人の影響か、放課後に俺を街でつれ回すなんて事がよくあった。一緒に居られる時間が増えて嬉しいのだが、温かな目で出迎える姉上への必死の言い訳を考えるのは辛かった。それに幼馴染みの影響、という所が、自分で言っておいてなんだが凄く気に入らない。そんなマイナスな事ばかり考えていたからか眉間に皺がよっていたらしい。アリババ先輩の指が延びてきたかと思うと、俺の眉間に指をつきたてた。「難しい顔してるぞ。また変な方向に考えてんだろ」と笑われた。貴方のことですよ!!とも言えず曖昧に笑う。

「それよりさ、どこ行きたかったんだよ」
「あ、こっちです。」

ちょうど差し掛かった裏路地を曲がる。そうしてそこでさりげなく指を絡ませるとアリババ先輩は弾けるようにこちらを向いた。笑顔で返すと赤くなった顔ではにかまれた。なんとなく喋ってはいけない気がして黙って歩く。じゃりじゃりとガラスの破片や砂がある地面を踏みしめる音だけが響いた。その間にも手は繋がれたままで、むしろ先輩の方から積極的に絡めて来るものだからこちらまで赤くなってしまう。ようやく目的地につながる階段が見えてきて、「あれを登った先です」と伝えて登り始める。そうして開けた場所に着いて、その先に見えた光景に、アリババ先輩は感嘆の声を上げた。

「うわ・・・!!」

目の前に広がる、街の景色。高いところからなため、街の全貌を見渡す事が出来た。暗くなった為に点滅したイルミネーション、ビルや家の明かりが混ざりあって冬だけの夜景を作り上げていた。宝石を散りばめたような光景にアリババ先輩は目を輝かせてからバッとこちらを振り返った。

「すっげー!!超綺麗!!よくこんな場所見つけたな!!」
「あ、いえ、またまた・・・」

本当は義姉さんから教えてもらったんだが(女性誌を片手に目をキラキラと輝かせながら熱く語っていた。)それは黙っておく。柵に手を着いてはしゃぎながら夜景をみるアリババ先輩は実際の年より幼く見えた。すると目の前に白い胞子が落ちてきて、空を見上げればやはり、ふわふわとした雪が降ってきていた。そういえば今日はホワイトクリスマスと、天気予報で言っていたような。「先輩、雪。」そう呟くとアリババ先輩は同じように上をみてから、おお!!と声をあげた。本当、何を見ても喜ぶ人だ。それからまた夜景を見たアリババ先輩。雪が夜景の輝きを反射させてキラキラと輝いていて、より絶景になっていた。ふとアリババ先輩を見れば、その夜景を写している蜂蜜色の瞳は輝いていて、電灯の淡い光に照らされる柔らかい金髪に純潔な、白い雪がふわりふわりと舞い落ちて、かかる。

「・・・綺麗だ。」
「え?」

「貴方が、」思わずポツリと呟いた。こちらをみたアリババ先輩の金色の細い髪に指を通した。髪に乗る雪がその金と溶けあう。くしゃりと優しく握り、すいて、一房を指に絡めてーー、そこではっと我に帰った。なんてことだ、なにをしているんだ自分は。髪をこんな丁寧に扱って、そんな、貴方が綺麗だ、なんて、どこのドラマだ。後悔と羞恥の念に襲われて一気に顔が赤くなった。先輩が見れずに視線だけを右往左往させてからちらりと伺うようにみれば、先輩も耳まで真っ赤にしていて、それが寒さのせいだけでは無いことは明らかだった。口をぱくぱくとさせながらどもっているアリババ先輩を見て、愛おしさが込み上げてくる。髪を絡ませたままだった指をそのまますくように落として、先輩の頬を包んだ。ビクリと震えた先輩の瞳は少し潤んでいて、あぁ、どこまでも綺麗な人だ。

「アリババさん、」

「メリークリスマス」そういって唇を落とせば、先輩も俺の左手に手を添えた。




舞落ちる一等星

触れた指先は甘く温かかった。











シャルアリが先輩×後輩に対してこちらは後輩×先輩で。甘!!ぺっぺっ!!←






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