しょーと

□あたたかなひかり
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75夜の酷い妄想。邪道だとおもう方は回れ右。







ぴしりと亀裂が走る暗い世界で、ああ俺はここで死ぬんだなと思った。ボロボロと崩れていく景色の中、こいつの金色はひどくこの風景には似合わない。目の前の顔は酷い物で、真っ赤になった瞳からは後から後から涙がこぼれ落ちている。ひっでーかお。あきれたように笑えばまた歪んだ顔に胸が締め付けられた。自分がこの空間と共に消えていくのが分かる。あっけなく崩れる俺の体を見て「何だこんなモンだったのか」とどこか他人事のように考える自分がいた。後悔は、無いとはいえない。まだあいつらに詫びることすらままなっていない。それから、こいつとだって、まだ伝えたい事が沢山あった。でも、もういいんだ。一番伝えたかったことも伝えられた、これ以上口を開いたら言ってはいけないことまで口走ってしまいそうだったから。もういいんだよ、これで。体が殆ど薄れていき、もう行かなくてはと、流れるままに身をゆだねた。アイツはこれから先きっと俺の事を引きずって生きていく。その事を申し訳なく思う反面、それを嬉しく感じる自分がいた。アイツの中で生きられるなら、それも悪くないかもしれないな、そうして目を閉じる、ふわふわと意識とか何かが引きずられはじめる――――が、しかし、次の瞬間後ろから声がして、振り返った時には体を温かいぬくもりが包み込んでいた。目の端に広がる金色、何かが体の中に入ってくると同時にぶわりと目頭が熱くなった。ばか、だからお前はばかで、頑固で、お人好しで。

(でも、好きなんだ)

ぎゅう、と抱きしめる力が強くなって、じわじわと広がる温もりに次こそ目を瞑った。
死にたくない
まだコイツの隣で、生きていたい。



(ほんと、ばかだなあ)

目を開ければ最後に目にしたこの世に終わりの様な薄暗い曇天とはかけ離れた青空、それと、先ほどと大して変わらない(寧ろ酷くなった)情けない顔に苦笑いした。ぽたり、とその瞳からこぼれ落ちる涙は次から次へと俺の頬を塗らした。上手く力の入らない手に鞭打ち、その頬へと伸ばし、ぬぐってやる、と、それが合図だったかのように勢いを増した涙腺の決壊と共に次は唇から嗚咽が漏れた。

「ばか、なくんじゃねーよ」
「っばか、は、おまえだよ、」

瞬間、強い力でまた抱きすくめられた。耳元で聞こえる嗚咽と「ばか」の繰り返しに、はぁ、と呆れたようなため息が出てしまった。情けない腕は俺にすがりつく見たいに回されて、アリババの涙で肩が濡れたのがわかる。(でもコイツのだと思うとそれすら綺麗だと思えてしまった。)

「ばか、かしむの、ばかやろ・・・!!」
「ぁー・・・わかった、わかったから離せ」
「っふ、ぅえ、えぇぇ」
「お前な・・・」
「っも、う、ダメなのかと、思った、もう、かしむと、会えないの、か、と、俺、っ」
「・・・っ」

ぐずぐずと鼻をすすりながら泣き声でそういうアリババに、胸の奥から込み上げてきた物に耐えきれず目尻からほろりと涙がこぼれてしまった。情けない奴、でも一番情けないのは俺の方だ。か細い声で何度も何度も存在を確かめるように名前を呼ばれてどうしようもなく胸が締め付けられた。あーあ、ほんとにコイツは。どうしてくれんだ。震える小さな体を愛おしく思いながら後頭部をくしゃりと撫でてやった。

(もう、この先、こいつに尽くす以外の道が見えねーじゃねーか。)



あたたかなひかり

そうしてばかみたいにばかな二人はお互いに泣きあったんだ。






今日という日が来るまでずっと我慢していた話です・・・・!!!!うううううかしむあああああああああ(泣)
しかし私が書くと全く泣けないなあれ可笑しい。







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