緑間真太郎は見た目からすると一言
“真面目”
ちょっと絡んでみると一言
“ツンデレ”
ずっと一緒にいたら気付く。一言
“可愛い。”
「真ちゃん、俺と遊ばねーかい?そんなことしてねーでさ!」
中間テスト一週間前だからだろうか、教室のなかの机は教材で一色ともいえるものだった。
だが其の空気雰囲気を乱す様な声が響くのは毎時の事。
高尾和成はテスト期間だろうが普段の調子を変えない。
それは高校生にしてはある意味他から呆れ憧れ妬みを生むものだとは本人は気づかない。
其の高尾はまっすぐに教室に並べられた机の教卓に一番近い場所にある
高尾の席の後ろは翠色に趣がある緑間真太郎という男だった。
馴れ馴れしく“真ちゃん”と呼ばれた暁、
当の本人は眉間に皺を寄せた状態で口を開く
「煩いのだよ高尾」
「其は元からじゃん!ねーねーベンキョーなんかよりもっと楽しいことしようぜ?」
「例えばなんだ」
「じゃんじゃーん!トランp「やるわけがなかろう!」
緑間はさぞや迷惑そうに顔を顰め乍きっぱりと断りを入れる、だが高尾は全く怯む気等なくけらけらと一人笑いをうみながら椅子をゆらゆらを傾けた。
「高尾、御前は勉強をしなくて良いのか?」
「ん?俺?…んん〜、大ー丈夫!」
「何を根拠になのだよ!」
さっきから怒鳴り過ぎだぜ、と矢張笑い半分に告げる。
「どーせ真ちゃんだってベンキョーしなくても一位独占っしょ?俺は二位でじゅーぶん、エース様を抜く気なんてねーよ」
「俺の一位は人事を尽くたからこそ有るようなもの、御前の知力とはまた違うのだよ!…そもそも抜けるものなら抜いてみろ一生かかろうと無理なのだよ!」
「おおーう言ってくれんじゃん真ちゃんったら強気ぃ!あー…えー…でもベンキョーはめんどいかな実際。」
「なら俺の勝ちだn「普通に勝って喜ぶのだけじゃつまんねーじゃん、そだ俺が勝ったら真ちゃんから俺のほっぺにちゅーしろよ、な?」
緑間の耳元で高尾はひそりと囁く。
ちゅー、という言葉に違和感を覚えないのは
実質の話高尾和成と緑間真太郎は付き合っている、とはいえないが両思いという名の関係上にある。
何故付き合わないのかと、
所詮の偽りは元から世に生まぬ方が良い。
つまり天地が引っくり返ろうが男同士なのは確か、何れだけ好きだろうと、何れ程に相手を愛してようと。
それ以上前に進むのか?
其が怖い、恐ろしい、辛い。
此だけの感情では足りないだろうに。
なら付き合うより両思いの儘が一番いいだろうと考えた結果だった。
囁きは案の定緑間にははっきり聞こえた、
間をおいてから怪訝な表情で高尾を見遣った。
「何故俺がそんなことをしなければならんのだ」
「人事を尽くして天命を待つ、此はライバル高尾和成君を破る為の試練だぜ!いけ緑間しんたろーくん!人事を尽くせしんたろーk「うるさいのだよ!」
緑間の一喝によってしんとやっと教室に沈黙が舞い戻る、
きょとんとした表情を浮かべていた高尾は時の後猫の如く双眸を細めて再度の微笑みをうかべた。
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中間テストが幕を閉じた頃の教室の殆どは屍と化していた。
「真ちゃん真ちゃーん、そんな悔しそうな表情すんなって」
「煩いのだよ高尾」
「ねー、真ちゃんちゅーは?」
「死ね」
「酷くね?!」
目尻に少々涙を溜めた状態にてオーバーなリアクションをする高尾にため息をはきだすと
緑間は眼鏡のアーチをくいと持ち上げ自嘲染みた笑みを浮かべた。
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放課後、夕日が空を彩り始めた頃だろうか
高尾と緑間は帰宅路を歩いていた。
「高尾、今更だが俺はテストで御前には負けていないのだよ」
「まー、そうだな」
本日返却となった成績表、緑間の成績は二位などまだまだ、すべて一位となっている
そう、同点だった。
ふて腐れたように唇を尖らせる高尾は少しばかり拗ねている様。
緑間はやれやれというように首を振った。
「じゃあこうするのだよ」
「ん?」
「二回すればいい」
「…、何を?」
「キス、だ。」
「ほー」
「…」
「ふー…ん良いじゃん!」
「そうか」
「やっだなー真ちゃん愛想無いぜ?今日、実の話真ちゃんはキス二回したかったんだろ」
「死ね」
「そんなん嘘。」
可愛いげの無い言葉を吐く
仄かに桜色を帯びた小さな唇を噛みつく様に塞いでやったら
毒舌家もさすがにぴくりと肩を揺らす。
深い碧色の双眸を細め、次第に閉じた。
腰抜けになるまで蹂躙してやんよ真ちゃん(笑)