『あお―――っ』
声が聞こえる。
『あおみ…っあおみねっ……』
揺さぶられる感覚と共に、
暗闇の中で確かに俺を呼ぶ声が。
序にずるずると鼻を啜る音も聞こえる
『あお…っ青峰…っち!!』
あぁ、俺を呼んでるのは黄瀬か…
ったくふざけたあだ名で呼びやがって
『青峰っち……っ……大輝…っっ!!』
*****
何度も呼ばれた声が煩くて耳障りで、
無理やり現実世界に引き戻されるような心境になりながら俺は閉じた瞼をゆっくり開いた、
視界はぼやけて歪んでいる、
だが目の前で此れと無いほど鮮やかな金髪が揺れていることは直ぐに分かった。
「…!青峰っち!青峰っち青峰っちぃっっ」
「…っんだようるせーなテメェは」
寝転がった上体を起こすと直ぐ黄瀬が飛んできてがばりと抱き着いてくる。
はぁー、と深い溜息を吐いてから黄瀬を抱き留めてから
辺りを見渡してみれば辺りは一面の蒼青藍。
それから俺たちが木で出来たまぁ俺らが乗ってピッタリなくらいの大きさの船にのっていることがわかった。
…は?
ちょ待ってくれ何此の状況、
え、ちょ、うん待ってくれ
「…夢だ。」
「夢じゃねーっス」
………、
「夢のなかの黄瀬のくせして喋んじゃねーよ」
「や、だから夢じゃねーって現実っス」
………。
「…マジ?」
「大マジ、さすがの俺でも此処では現実逃避できねぇっスからね」
残念な事に俺は、さっき何があって何が起こってどうして此処にいるのか
まったく持ってわからない。
つまり敢えているなら
此処は何処、私は誰?
ってやつだ。
「黄瀬ェ、何があった」
「分かるわきゃねーっすよ…でもまァ一つありうるとすれば…」
「「嫌がらせ(っスね)」」
よくあることだった、体育館で1on1したり弁当の中身取り合いしたり居残りの補習一緒に遣ってるときとか普段から何処かいろんな視線を感じる。
まぁしょうがないことだ、相手はモデル
俺は普通の男子中学生。
周りからしてみろ黄瀬にフラれた女子の怒りが俺にぶつけられてもしょうがないことだ。
何故黄瀬も巻き込むのかはわかりかねるけど
「で、お前此処が何処かわかんの?」
「…恐らく…ずっと遠い所の川か湖っスね」
きりっ、と真面目気な顔で人差し指を立て乍にすらすらと言葉を返してくる。
顔は真面目でも言ってること滅茶苦茶だぞモデルさん、
川と湖全然違うくね?阿呆
俺は呆れたように水面に視線をやる、本当何処だ此処、コイツにかかわるとロクな事おきねェわ……。
この前の学園新聞に俺の記事取り上げてくれんのは良いけどでっかく俺に勝てんのは俺だけだ(きりりっ)
とか書かれたら恥ずいんだけど、…きっとそれもコイツのせいだ、ウン。
そのとき、
「…!あ!!俺携帯持ってるっス!場所わかるし黒子っち達にメールして助けて貰える!」
「其れを先に言えよ黄瀬!」
「まぁまぁ、じゃあさっさとメールするっスかねー………………、青峰っち、俺も一緒に助けてください涼太様、って言わないと俺だけ助けてもらって青峰っちは放置するっスよ」
メールを打ち始めた矢先、ハッとした表情を浮かべた束の間、悪魔の如く口角を吊り上げ笑めば急なことを紡ぎだす
「は、言うわきゃねーだろ」
「言わなきゃ青峰っち水の上で一人でぷかぷかっスよー?」
携帯についたキーホルダーの紐の部分を器用に使って携帯をくるくる振り回し乍言葉を紡ぐ黄瀬は小悪魔なんて可愛い物じゃなかった
「へーへー言えば良いんだろ言えば、」
その姿を見ればもう段々と面倒臭くなってきて、
もう適当にいってやろうといった態度で返答をした。
「さ、早く早く」
「っち、急かすなっての…えー…なんだ」
期待の眼差しで此方をじいと見詰めるコイツの目が目ざわりでしょうがない、
こっち見んな犬。
「あー…はぁ…俺も一緒にたすk「っっっあああああ!!!!「うっせなんだよ折角言おうと…って何やってんだ黄瀬えええええ」
折角口を開いて言葉を告げていた最中其れは突然の黄瀬の叫び声に揉み消された
何事かと視線を黄瀬に向けてみれば
水に沈んでゆく携帯の姿があった。
船から身を乗り出して其姿を眺めたも時は遅く
オイ黄瀬君本当君何やってんのかな?!!
バッと水面にあった視線を黄瀬に向けて見たらアイツの目から大粒の涙がぽつぽつと落ちて来ていて
「っテメ何ないてんだよ」
「だって、だってだって」
「だってじゃ何もわかんねーし!…餓鬼かテメェは…」
「だってぇ…っっ」
あまりにもえぐえぐと可愛く泣くもんだから怒るもんも怒れなくなり立場上こうするしかないと黄瀬を抱き寄せ背中をぽんぽんと撫でてやる、
すると黄瀬は自分の服の裾で目元にたまった涙をぬぐって
「―――っス…、」
「何だって?」
「防水っス」
「何が」
「俺の携帯。」
「だから?」
「取ってきて」
あんだって?
テメェ今なんだって?
取ってこいだとう
誰だ落としたのは
何て、思考を巡らせていた最中に構わず、黄瀬は俺を水の中に突き落とした
*********
『あお―――っ』
声が聞こえる。
『あおみ…っあおみねっ……』
揺さぶられる感覚と共に、
暗闇の中で確かに俺を呼ぶ声が。
序にずるずると鼻を啜る音も聞こえる
『あお…っ青峰…っち!!』
あぁ、俺を呼んでるのは黄瀬か…
ったくふざけたあだ名で呼びやがって
『青峰っち……っ……大輝…っっ!!』
アレ、此れ前に一回――――。
「大丈夫?」
目を開くと目の前には一面の蒼が広がっていた、
だが今回は水のあおじゃなくて空のあお。
横にいるのは案の上黄瀬だった、心配そうに眉を八の字にして俺を見下ろしてる。
どうやら此処は屋上らしい
上体をむくりを起き上らせると黄瀬が再度口を開いた。
「青峰っち、ずっと寝てるとき魘されてたんスよ」
「マジか」
「うん、俺が絵書いてるときにさ急に携帯が携帯がーって言い始めて、何か心配になって起こそうとしてた最中っス、いつも通りで良かった」
「…そりゃサンキューな。つか絵書くなんて珍しいなオマエ」
すると黄瀬はへらりと無邪気に頬を緩めて微笑んで綺麗に色を付けられた絵を此方に見せてくる。蜂蜜色の双眸を細めた矢先口を開いて
「タイトルは涼太と青峰っちの水上旅行っス!」
…………………
「殴っていいか黄瀬ェ」
「何でΣ」
黄瀬オマエ何者だっ!