夢小説

□ひとつだけ、違うとしたら
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自由を求めて束縛を逃れた少年と束縛を求めて自由を逃れた少女。
これはそんな男女二人の物語――

「だから、離せって!」
「なんで?なんで出て行くって言うの?」
「は?決まってんだろーが、この家が嫌だからだよ!」
「なに?なにが不満なの?」
「離せって!」
「いった!なにすんのよっ!」
「お前が言うこと聞かないからだろっいってえよ!」

「なにしてんの」
気づけば部屋は鮮やかな血の色、尖った指の爪先にはまだ生ぬるい血と爪と皮膚の間には肉片。
イルミが音もなく部屋に入ってきて俺たちを見る。
下手なミルキの拷問の特訓よりよっぽど酷い有り様だ。
息づかいがまだ荒いるちを見ると俺と全く同じ瞳をしていた。
「べつになにも」
「ふーん。部屋、ちゃんと片づけときなよ」
「…ゴトーに頼んどくー!」
そう言って窓から飛び降りた。
俺がイルミと必要最低限しか話さないのをるちは知っている。
後に残された俺は生臭い血の匂いを嗅ぎながら、ベッドに身を投げ出した。
俺たちのケンカ(じゃれあい)はいつもそうだ。
し終わったら何事もなかったように過ごす。
俺もるちもゾルディックで、殺し屋で、餓鬼で――
俺もるちもゾルディックで、殺し屋で、人間で――
ビジョンがあるんだ。
少なくとも俺は、ビジネスを殺し屋にするつもりはない。
それだけはるちと違うようだ。


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