「葉月くんっていつも傷だらけよね」
「虐待されてるとか?」
「まさかー」そのまさかだよ。
まあ別に気にしてないし、見るからに目立つ顔を殴る親も親だけど、隠そうとしない息子も息子だしなぁ。
顔も身体も同じくらい殴られてるから脱いだら俺、すごいよ?
もちろんそっちの意味で。
彼女の前では脱げないなぁ。
まあいないんだけどね。
「おい」
「はい?」
顔を上げると、名瀬夭歌もとい黒神くじらが妙にそわそわしながら視線を泳がせていた。
「えーと、なんか用?」
「ちょっと話いいか?」
「いいけど…あと30分で家に帰らなきゃなんだけど」
「おう」
なんでそんなに嬉しそうなの?
「お前って虐待されてるの?」
「うん」
「まじか…」
ちょっと待って。
もう一回言うけど、なんでそんなに嬉しそうなの?
「いや、いいなーって思ってよ」
「ふーん」
「どんな風にやられたか詳しく教えてくんねえか?」
「親父のストレス。夕飯食った後とか、風呂入る前、休みの日は朝飯とか吹っ飛ぶよ。」
「へぇ、一度生で見てみたいな」
「だったら家来な、もういいかな?」
「今日お前んち行っていいか?」
「いきなり?まあいいけど」
本当はマッハで帰んなきゃなんだけど面倒くさいから普通に自転車に跨ると何故か名瀬まで後ろに乗ってきた。
「え?もしかして俺漕ぐの」
「当たり前だろ。お前の自転車なんだから」
「はいはい」
今日は痛みで寝れねーぞ。