夢小説

□ちっさい種
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「『るちちゃんの顔って、なんか40代みたいだね』」
「…いいんですか。私のナックルボールが火を噴きますよ?」
走らせていたシャープペンシルを止め球磨川くんを睨む。
当の本人は相も変わらずに憎たらしい顔で私に目を向ける。
「『いやあ、君を茶番に付き合わせる気はないよ』」
「じゃあ言ってください。即座に惻々」
「『るちちゃんは疲れた顔してるねってこと』」
「はぁ、受験ですからね」
「『そう受験!僕には縁もゆかりもないけれど、そんながんばり屋さんのるちちゃんにサプライズ』」
ごそごそと机の中を漁る。
いっそ鼠の死骸とか出てこないかなぁ。
「『じゃんっ!快眠グッズ!』」
「はあ…」
まさかの為になるグッズ。
少し嬉しい。
「『どう?僕のセンス』」
「センスはいいと思います。」
「『はい!』」
「なんですか。その顔は」
「『え?これはお礼にちゅうとかしてくれるあれじゃないの?』」
「あれじゃないです」
「『ちぇ。残念』」
「返してとか言わないんですか?」
「『だってそれは君にあげたんだろ』」
"あーあ残念"
そう言いながらだらしなく机にうなだれる球磨川くんに少しだけ心が揺れた。
本当に少しだけ。
口が裂けても言わないけど。


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