夢小説

□蜘蛛壱拾壱
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「団長?」
マチがクロロを呼んだ。
呼んだ。というニュアンスとはまた少し違うかもしれない。
どうしたの?という掛け合いだろうか。
クロロは顔を上げずになんだ?と言った。
最近のお気に入りらしい。
「私の話聞いてた?」
「ああ」
クロロは依然顔を上げないまま、本のページを捲る。
フロアにいるメンバーはマチ、フランクリン、コルトピ、ボノレノフ、ノブナガだ。
フィンクスとシズクは外出中。
フェイタンは部屋で読書、シャルナークは部屋で仕事らしい。
ヒソカはまた青いリンゴでも見つけて楽しんでいるのだろうか。
幻影旅団といえど蜘蛛といえど、二人の死はあまりにも衝撃的であった。
競売を終えてからの蜘蛛はまるで手足を一本ずつ失った蜘蛛のごとくに大人しかった。
「だからさ、そろそろ団員集めしてもいい時期じゃないってあたしは言ってるんだ」
「そうか」
クロロはマチの話を真面目に聞く気がないようだ。
適当に言葉を返してまた本へと集中する。
もしかしたら最初からマチの話を聞いていて今は必要ない、とあえて返事をしなかったのかもしれない。
「はぁ…」
マチはそれ以上は何も言わずに、フロアを出て行った。
フランクリンが心配そうにマチの去って行った方を見つめていた。
「なぁ団員、ウボォーとパクの死を忘れるつもりはねぇけどそろそろ切り替えねぇか」
「そうだな」
今度はちゃんと顔を上げてフランクリンの目を見た。
区切りのいいところなのか、半分まで読んだようだ。
ぶ厚い辞書のような本。
「マチだって言い方はあんなんだけどちゃんと団長を気遣ってんだ」
「分かってる」
そう言った。
誰も何も言わなかった。
「団長…?」
フランクリン以外は。
クロロは涙を流していた。
静かに、美しく。
「本に感動しただけだ」
フランクリンは目を細めて震えそうになる声を抑えた。
「ああ」


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