夢小説

□嘘憑き
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「この痛みから解放されるなら
 いっそ死んで楽になりたい」
「『…この痛みから解放される
  ならいっそ一生このままで
  ありたい』」
ずっと同じ痛みを感じてたら、そのうち痛みになれるんじゃない?
そう言って球磨川は歪みきったうすっぺらな笑顔を向けた。
そっちの方が慣れるよ、だって死んじゃったらもっと苦痛を受けるんだよ。
地獄あるの知ってる?
「『きっと今まで感じた痛みが
  一気に襲ってくる感じだよ。
  気が狂うくらいに苦しくて
  痛いんじゃないかな?』」
ふふふ、君には耐えられない痛みだろうねぇ。
羨ましいな。
球磨川は立ち上がり、おもむろに注射器を取りだした。
「『これ凄く気持ちいんだって。
  君もやってみなよ、
  オナニーよりセックスより
  快感を味わえるよ』」
君は震える手を抑えるためにそれを受けとった。
ガクガクと冬じゃないのにさぶいぼが出ている。
呼吸もなんだか上手くできない。
「これで絶対楽になれるの?」
「『もちろん。僕は今まで嘘を
  憑いてきたことはないよ』」
もちろんそれは球磨川自身がそう思っているだけである。
ぷす
ナイロンを突き破るような軽い音がして針が肌に刺さった。
ねぇ気持ちいでしょ?
ねぇ、聞いてる?
あれおかしいなぁ。
寝ちゃったの?


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