『俺は誰も信用なんかしてねぇ』
昔誰かに言った気がした。
そしたらソイツは笑って言った。
あどけない表情で。
『うん。それが君のスタイルなんだね』
ソイツとの記憶はそれしかない。
だからソイツが誰なのか、誰がソイツなのか、全く分かんねぇままに俺は18になった。
「『るいちゃん、今日帰りに本屋寄ろうよ』」
「ああ」
誰も信用してないということは、誰一人として愛すことができないということだ。
つまり俺は生涯孤独。
誰の記憶に残ろうと、きっといずれは忘れられる。
「ねぇ、球磨川」
「『うん。なぁに?』」
にこにこ。
「俺って必要?」
「『うん』」
にこにこ。
「俺ってお前の友達?」
「『うん』」
にこにこ。
「俺ってひとり?」
「『うん』」
にこにこ。
俺は気づいた。
寂しいから玩具が欲しくて、
寂しいから玩具なんか飼って、
寂しいから玩具を周りに置いて、
自分で自分を殴りたくなった。
「『本当はるいちゃんのスタイルもう切れちゃったんだけど特別に』」
そう言って球磨川は俺を優しく、抱きしめた。
ふわっと一瞬、お花畑にいるかのような錯覚に陥る。
実際はボーイズラブばりに公衆の面前で抱きしめられているだけなのだけれど。
「『大丈夫、るいちゃんは一人かもしれないけど、今から改心すればいいんだよ』」
そう言って微笑んだ。
「間に合うかな…こんなおれでも」
「『間に合うよ!るいちゃんなら』」
一筋の涙が流れた。
今までさんざんやりたい放題暴れたい放題やっておいて、今さら誰が俺を気にかけてくれるものか。
そんなに大した人生じゃなかったけどそれにしても大した人生じゃなかった。
相手を傷つけて、
自分も傷つけて、
全部グチャグチャにしたくて、
全部壊したくて、
ずいぶん自分勝手な人生だったと改めて思う。
それでも、ほんの少しだけ、
俺の我が儘を聞いてくれるのなら
「ごめんなさい…」
「『うん。いいよ』」
球磨川は笑っていた。
「『めだかちゃんも善吉ちゃんも、きっと許してくれるよ』」
だから
「『もう無理矢理ヤらないでね』」