夢小説

□上手い話には必ず裏がある。
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「ちょっと、タイム」
「なにを?何を待つっていうの」
茶色がかった髪が大きく揺れる。
それに目を捕られていると、無理やり顎を使って目を合わせられる。
「あは、好きだよ。そういう目」
無邪気に笑う。
「離して下さい!」
拘束されている両腕を動かす。
全く微動だにしないけれど。
「逃がしはしないよ」
「やだっ!」
ぷす
首になにかを刺されて気を失う。
それからの記憶は当然ない。
「あ、起きた?」
コーヒーの香りで目が覚めた。
一言も言葉を発していないのに作業していた手を止め振り向いた。
「飲む?」
「いらない。私コーヒー飲めないから」
「ふーん」
片手にカップを持ったまま器用に携帯を耳に当てる。
「あ、もしもしヒソカ?悪いんだけど帰りに――」
その隙にとドアに手をかけると、刹那その手を誰かに重ねられた。
もちろんこの部屋にいるのは私とこの男しかいないのだから犯人は決まっているのだが。
「言ってるじゃん。逃がさないって」
にやりと怪しく笑うとパッと手を離した。
「大人しくベッドに戻った方が賢いと思うよ」
「触らないでよっ」
肩に手を置かれ、ぱしんっと払うとにっこり笑ってまた元の作業に戻った。
しばらくするとドアが開いた。
「やあヒソカ」
「やあこれ例のもの
思わずギョッとした。
まるでピエロのような人物が男に茶色い紙袋を渡した。
ありがとう、そう言って男はピエロに数枚の紙幣を渡した。
満足そうに小さなキッチンで湯を沸かし始める男。
「ミルクティーなら飲めるかな」
そう言ってカップを渡してくる。
「あ、りがとう」
受けとると最初に会った時と同じように笑った。
「ひとつ、聞いていい?」
「なに?」
「なんで私を捕まえたの」
なんで、男は鼻で嘲笑い、近づいてきた。
あまりの変わりように身体を強ばらせると、男は更に目と口を弧を描くように細めた。
「理由を言わなきゃ駄目?君はもうすぐ死ぬのに」
そう言えば、と今思いだした。
私の指は6本あったのだ。


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