夢小説

□習うより慣れろ
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「…………あ」
「よ、元気?」
「…うん」
キルアくん。
キルア=ゾルディックくん。
有名な暗殺一家の三男で、とても優秀だと聞いている。
だから殺人中毒者なイメージを描いていたけど真逆で驚いた。
元気で表情豊かで…12歳だからなのか普通に子どもらしい。
「ここの暮らしにはもう慣れた?」
「うん、まあね」
「まぁ少し暗いけどそれ以外で生活するには不自由ないからね」
「確かに」
それはお金をたくさん稼いでいるからなのだろうか。
私は息を大きく吸った。
…昨日よりも酸素が薄い。
それともなにか人体に影響のある気体でも混じっているのか。
「気づいた?この部屋お袋に監視されてるよ」
「…………」
「たぶん徐々に慣れさせるように酸素を少なくしてる」
「死なないの?」
「まさか。ミリ単位だからホント少しずつ減らしていくんだよ」
俺はもう慣れたけどね、と得意げにキルアくんは言った。
「他にも食事に最初は気づかない程度の毒入れてあるからね」
ゾルディック家は意外にもきちんと順序を踏んでいた。
習うより慣れろという教えか。
慣れは確かに強みになると思う。
「…で、食事の用意できたらしいけど、食う?」
試すような笑顔。
私は座っていたベッドから降りてカーディガンを羽織った。
「食べるよ、ちゃんと」
部外者を試すなんて本当に元気な12歳なんだなと、彼の後ろ姿を見ながら改めてそう思った。
と、同時に無駄に大人びた彼の態度と口調に少しだけ胸がチクリ傷んだ。


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