夢小説

□サドサイエンティストとヌイグルミ
1ページ/1ページ


「名瀬夭歌は言いました。
 倣うより馴れろ、てなァ?」
にぃっと不気味に笑うと、液体の入った注射器を私の腕に挿した。
薬品が入ると頭が覚醒してきて、途端に鋭い痛みが襲ってきた。
「う゛ああああっ!いた゛いっいだいっいたいっ!よぉ…」
床に転げ回る私を見て名瀬夭歌は満足そうに笑った。

古賀いたみは死んだ。
名瀬夭歌が殺したんだ。
信頼して手術台に横になった後、目を開けることはなかった。
球磨川禊は嬉しそうに口を開いた。
「『本当に嫌なの?僕には君が本当に嫌がっているようには見えないけど』」
球磨川禊と私は付き合っている。
そうは言ってもよく分からない関係で恋人だからと言って必ずしも私がピンチでも球磨川禊が助けてくれるとは限らない。
球磨川禊はそういう人間であった。
訴えかけると、愉快そうに目を細めた。
「『助ける?この僕が?』」
どうやら今回も加勢する気はないらしい。
ため息と一緒に更に口を開いた。
「『僕にはまるっきり円のない話だけれど、あえて言うなら□□□□□□□□□□□□□□□□』」
そう言って背を向けた。

パチッ
「起きたかよ」
あまりの激痛で気絶していたみたいで、目を覚ますと手術台に横になっていた。
「改造人間はもう止めだ。今のトレンドは"縫いぐるみ"ちゃんだ」
「いやあっ!」
「大丈夫だってたぶんよー俺様の腕を信じろや」
ピッと糸を張る。
もちろん普通の糸なんかじゃなくてプラスチックでできた太くて、硬い糸。
「嫌だっ!くじらちゃん……止めてよ」
「俺はくじらじゃねぇっ!!」
バキバキ
「う゛あ……っいたいよぉ……」
腕の第二関節を乱暴に折られて涙が止まらない。
ぷらんとだらしなく垂れる腕。
バァンッ
「『球磨川禊参上!』」
「球磨川禊……っ」
「おー球磨川の旦那じゃねーか」
なっついなー。
で、なんの用だ?
「『えーと…なんだっけ?ああ。僕のるちちゃんに手を出すな!』」
「何時(いつ)、コイツがアンタのもんになったよ」
「『それはお互い様だよ。名瀬さんの物にだって何時なったのって話』」
「ふざけんなよっ!」
名瀬夭歌が注射器を取りだす。
刹那、球磨川禊が名瀬夭歌の身体に触れた。
名瀬夭歌はその場に倒れる。
「『オールフィクション!名瀬さんの異常性(アブノーマル)をなかったことにした』」
ゾンッと効果音を立てて決めポーズをした。
折れた腕を垂らしながら手術台から降りると背中に激痛を感じた。
球磨川禊に近づくとスッと額に手を伸ばされた。
「助けに来ないって言ってたのに」
「『え?僕そんなこと言ったっけ?』」
「…………嘘憑き」
「『そう大嘘憑き!大好きだぜ、るちちゃん』」


[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ