夢小説

□人魚姫と人間失格者
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白い息を吐きながらスタッフ専用の入り口を開けるとちょうど前を種島さんが通った。
「葉月くんおっはよー!今日も頑張ろうね!」
俺はにっこり笑い返す。
以下、ちょっとだけ俺の自己紹介だ。
葉月るい高校生一年生。
身長169p体重55kgと小柄である。
バイトの動機は小遣い稼ぎ。
以上。
ガチャ
男子更衣室に入ると、相馬さんが着替えをしていた。
「おはよう」
頭を下げてロッカーの前に立つ。
自分のロッカーを開けようとすると違和感があった。
それはさておき開けてみるとまた見覚えのない制服がハンガーに掛かっていた。
「…………」
「わーすごく葉月くんに似合いそうだよ」
「…………」
相馬さんを見るといつもの調子で笑った。
相馬さんは俺が見た目ショタなのをいいことにメイド服だのセーラー服だのあの手この手で着せようとする。
それだけならお断りするのだが。
「…………」
制服を返すように手を差し出すとすんなり返してくれた。
「はい」
渡されたのは俺のじゃないサイズのぶかぶかな厨房の制服。
予備の制服は置いてあるけど埃まみれの制服は着たくないし、サイズが合わない。
この制服だって種島さんに丈を合わせてもらった。
「…………」
そして違和感というのが俺のロッカーだけ鍵がついている。
別にやましい物が入っているわけではないのだがせっかくついてるなら、というだけでかけている。
それが毎回、開いているのだ。
ロッカーを閉めると嬉しそうに目を細めた。
「葉月くん、好きだよ」
相馬さんが切なげに言った。
相馬さんは自分が嫌いだった。
俺に対しての嫌がらせと関係あるのかないのかはさておき。
「…………」
「ふふふ」
相馬さんがふらりと出ていくと、入れ替わるように佐藤さんが入ってきた。
「嫌なら嫌って態度示さなきゃ、アイツ調子乗るぜ」
「…………」
「まあそう簡単に言えねぇか」
「…………」
「だけどそれじゃお前が辛いだけだぞ」
「…………」
「俺に出来ることあったら言え」
そう言って佐藤さん心が落ちつく飴を俺に向けて放った。


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