「た、ただいま…」
「おっそい」
玄関を開けると、6歳年下の雷斗(ライト)が腕を組んで立っていた。
大学の授業にサークルにバイトにとクタクタになっていた俺は一瞬幻覚を見たのかと思った。
「はぇ?」
「間抜けな面…」
いや待て、ここ俺んちだよな。
そのまま突っ立っていたら雷斗は目を細めて顎で鞄を指した。
「突っ立ってないで飯食ったら」
「あ、うん」
て、ここ俺んちなんだって!
慌てて雷斗の後を追いかけた。
「……ん、美味しいよ」
「そっか」
途端に柔らかい笑みを浮かべる。
普段は仏頂面なのに俺が誉めると必ず嬉しそうに微笑んでくれる。
両親は共働きな上に帰りが遅い。
そんな俺の為に雷斗は家に来ると必ず夕食を作ってくれる。
俺は雷斗に悪いからとお断りしているだが、暇なのか毎日のように来てくれる。
高1でしかも男のくせに料理の腕は普通以上だ。
「ごちそう様」
「ん、」
片づけの担当は(やると言ってきかない雷斗をようやく説得して)俺だ。
皿を片していると、雷斗が背後に立っていた。
腰に手を回してきて少しくすぐったい。
首だけを少し動かしを見上げると意地悪そうに笑った。
そういえば俺、雷斗より10p背低いんだよなぁ。
「なんだよ〜くすぐったいって」
「本当にそれだけ?」
耳元で囁かれ、無意識に肩がピクりと動いた。
「かわいい…」
首筋に熱いキスを落とされ、声が漏れた。
「あ……んっ」
思わず手を止め、雷斗の方を振り返ると真剣な表情をしていて動けなかった。
唇はそのまま首筋から鎖骨へと少しずつ降りてくる。
「やめ…っ」
振り上げた腕は手首を捕まれて壁に押しつけられる。
「ただいま〜」
ビクゥ!
「あ、類くんお帰り」
「雷斗さんただいま、兄さんも」
「あ、ああ…うん」
弟の類は疲れた〜と言いながらリズムよく階段を上がっていった。
「残念、また今度」
雷斗はソファーに投げ捨てていた上着を片手に持って俺の首筋を舐めた。
「ひぅ!」
変な声を上げてしまい、慌てて口を押さえた。
その態度に雷斗は満足して帰っていった。
もう、なんなんだよ〜!
―翌朝―
「兄さん首筋けがでもしたの?」
「?」