創作小説

□留学より留年くん
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放課後、教室には俺一人。
職員室に呼び出し食らった利依を待っている。
「秋成〜」
「……なんだよ」
窓から視線を移す、秋成(アキナ)は利依(リイ)の情けない顔が意外とすぐ近くにあって吃驚した。
利依を見ると捨てられた子犬を飼うのを反対されたような瞳で俺を見た。
「おれ留学できないよ〜」
そう言いながら一枚の紙を見せてきた。
赤い文字ででかでかと大きく18と書かれている。
たぶん英語のテスト。
ちなみに俺たちの通う高校は赤点が35点以下。
「え?まさか」
「うん」
利依は俺たちの関係が普通な海外に行きたいと考えている。
だから将来困らないようにと英語だけには力を入れているそうなのだが…
勉強して赤点というのはどうなのだろうか。
「うん、ドンマイ」
「秋成は?赤点あった?」
「ない」
「……う゛〜」
唸りながら俺の背中に抱きつく。
重いけど、英語(のみ)を必死に勉強していたのは認めてやる。
赤点だったけどな。
「おれ2週間も秋成とちゅーしてない〜」
「はいはい」
「秋成不足で死んじゃう〜」
「……しょうがないな」
「わーいっ!」
途端に子犬みたいにしっぽと耳を動かす。
改めて向き合うと急に恥ずかしくなって目線をそらす。
利依は真剣な目つきで俺の顎に指を添える。
ちゅ
誰もいない教室にリップ音が響く。
「ん……ぁ」
「かわいいよ」
それだけなのに頭がぼーっとしてしまう。
口だけって言ったのに首筋や鎖骨にも華が咲いていった。
その部分が熱くて声が漏れる。
「やあ……っ」
女みたいな声が出て、口を手で塞ごうとしても利依がそれをさせてくれない。
利依の腕を掴んでもするすると力が抜けてしまう。
ぼーっとした意識の中、ぷちぷちとボタンが外れる音が聞こえた。
「ふぇ…?」
「おれ、もう我慢できないっ!」
「うわちょ!」
はだけたシャツの中に顔を突っ込んでくる。
ここ学校!


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