創作小説

□アマノジャク
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「キモい」
「え……」
俺は瑛(アキラ)、生徒会会長だ。
で、目の前でこの世の終わりのような顔をしているのが論(ロン)。
生徒会、と言っても一人しかいない。
自分で言うのもなんだが俺一人居れば、生徒会が成り立つからだ。
だから生徒会室も俺の私室化している。
で、からかうとすぐ本気にして悲しげに眉を下げるバカ論。
…俺も人のことは言えないがな。
「俺に何か用か」
「えっと……特に」
「暇な奴だな…それにしてもヒドい顔だ、誰にも見せられない」
「うん……」
用なんてなくていい、
会いにきてくれて嬉しい。
顔なんてどうだっていい、
お前は充分綺麗な顔だから。
本当に誰にも見せたくない。
伝えたいことは、いつも裏返しの言葉となる。
そんな自分に腹が立って、でもそれを俺の本音だと理解する論にも、最低なのは分かってるけど。
今日の生徒会の仕事は終わった。
だったら俺は今日こそ論に…
ツカツカと近づいて修次の両肩を掴んでキスをする。
「んっ……ふ」
「…………」
ちゅ、ちゅっ
啄むようにキスをすれば、論が見る見るうちに赤くなっていく。
どうしたら、
素直になれるだろうか。
どうしたら、
伝えられるのだろうか。
この気持ちを。
「あきら…すき……っ」
論が切なげに呟いた。
俺もって、言えたらどんなに楽なのだろうか。
すっと離れると視線を逸らしてしまう。
まだだ。
まだ俺は何も伝えられない。
そんな臆病な俺は、大嫌いだ。
「俺以外に、そんな面……見せんじゃない」
精一杯だったけど、言えた。
耳まで真っ赤になった顔を隠すように手で押さえながら上げる。
「うん。気をつける」
一瞬だけ驚いた顔をしてすぐに論はその整った顔で嬉しそうに微笑んだ。
今日のミッション、クリアだ。


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