「こらっ麗!」
「ごめんなさいごめんなさい!」
麗(レイ)は身をきゅっと縮めたまま僕を見上げた。
「でも、飛鳥(アスカ)…」
「言い訳なんか聞きたくない!」
ピシャリ言い放つと麗も口を閉ざした。
だけど今にも泣きそうな顔で。
僕は高ぶった感情を鎮めるため、一旦部屋を出ることにした。
「あすか……っごめん」
「…………」
出る直前に真剣な表情をして麗がもう一度謝罪した。
僕は何も言わなかった。
麗は有名な病院の院長の息子で、軽度のひきこもりだ。
僕はそんな環境が嫌いだった。
だから院長は僕をその病院で働かせてくれると言ってくれたが、断った。
なにより僕自身の力で麗を自立させてあげなければ意味がない。
『僕についてきてくれる?』
『うん…よろしくっ!』
嬉しそうに微笑んだ麗を、今でもはっきり覚えている。
なのに。
麗の奴、インターネットで取り寄せた古今東西ありとあらゆるお菓子を部屋に散らかしていた。
………………
………………
……よし、麗に謝るか。
ガチャ
「飛鳥!あすかあすかあすか〜」
部屋に入ると、麗が勢いよく抱きついてきた。
優しく頭を撫でると更に力が強まった。
「……ごめん」
「なんで?悪いのは俺だよ?」
僕を見て困ったように笑う。
「俺すっげー愛されてる〜」
ちゅっ
頬にキスをされて、へへっと照れたように笑う。
たまらなく、愛おしい。
「麗、ごめん。好きだよ」
麗の顎を持ち上げてキスをする。
「んっ、」
軽く唸り背中に手を回す。
舌を絡めると身体が熱くなる。
「ふ……っん」
「…なんでこうなった」
「さあ?なんででしょー?」
「れい……」
「わー!ごめんって!」
散らかった部屋を見渡して、ため息を吐く。
またか。
もう一度ため息を吐く僕を見て、麗は嬉しそうに笑った。