創作小説

□キライキライスキ
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「いって……っ」
「もう…なんで喧嘩なんかするんだよ……阿人(アト)」
「んなこと言ったってよ……等夢(ラム)」
俺の幼なじみ、阿人は喧嘩っぱやくて毎日傷を作ってくる。
その度に俺は家で傷の手当てをするのだが、日に日に傷が深くなっているのだ確実に。
「強い方がかっけぇじゃん……いっ!」
傷口が染みたようで思いきり顔を歪める。
「ごめん……でも……」
「大丈夫……あー疲れたちょっと肩貸して」
「ん」
肩に寄りかかる。
この重みが好きだ。
「なぁ、キスしていい?」
「え……」
驚いて、阿人を見ると真剣そうな顔をしていて思わず顔を逸らしてしまった。
「なぁ、いいだろ」
「俺、男なんだ…けど」
「知ってる。見たら分かる」
そのまま近づいてきたので後ずさりすると阿人も近寄ってきた。
「なんで男同士はキスしちゃいけねぇの」
「え…っと、なんでだろう…」
改めて問われると答え難い。
悩んでふと顔を上げるとすぐ近くに阿人の顔があって驚いた。
「羅夢……」
「阿人……っ」
男なら、キスぐらい別にいいじゃないかと思うけれど、女の子ともまだしてないのにそれが男同士となるとそれなりに勇気がいるんだ。
「いいよ……」
その後すぐ唇を重ねられる。
「んっ……」
生暖かくて柔らかくて、初めての感触だった。
「好きだ。羅夢」
「…阿人……ごめ、んっ!」
「お前に拒否権はねぇんだ」
「っ!阿人…」
胸板を押し返すと、倍の力で押しきってくる。
力に流されるまま、俯くと阿人が力を弱めた。
「嬉しいけど、すぐ喧嘩する恋人は嫌いだなぁ」
そう言って顔を上げると泣きそうな顔をした阿人が抱きしめて優しいキスをくれた。


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