「もう嫌っ!」
ぼふっとベッドにうつ伏せになって枕をぎゅっと握る海(ウミ)。
女のような顔立ちにスラリと伸びた手足、指先まで綺麗に整っている。
そんな顔で僕を見ないで。
「止めたいよ……流流(ルル)」
「……海が本当に止めたいんなら僕は止めないよ」
「……るる」
這い寄ってきて僕の頬に触れた。
整った顔が今にも泣きそうで胸が締めつけられそうになった。
「うみ……」
流流が伸ばしてきた手に僕の手を重ね、唇が合わさった。
海がモデルを始めたのは高校二年生の夏だった。
僕は海にいきなり「モデルやってみる」とだけ言われ酷く混乱したのを覚えている。
もともと容姿端麗だった海は外に出ると読者モデルとしてと数枚写真を撮られて僕としては気が気でなかった。
これ以上、多くの人に海を知ってほしくなかったからだ。
モデルだって海が勝手に決めたから僕は頷くことしか出来なかった。
相談されたら速攻止めたのに。
「流流?」
「あ、ああ…僕は海が好きだよ」
「へ?なに急に」
困ったように笑う癖、モデルの仕事を始めるようになってから多くなった。
そんなに辛いなら、止めちゃえよ。
なんて言えなくて。
そんな自分が情けなくて。
「だから、そんな海に辛い仕事はしてほしくない」
「流流……俺、やっぱりモデル続けるよ」
「なんで?辛いんでしょ」
「辛いたって仕事だもん。流流だって嫌な仕事あるでしょ?」
頷くと頭を撫でられた。
僕はお前の飼い犬か。
「俺甘えてたわ。仕事にも流流にも…だから今度はめちゃくちゃ頑張って流流との一軒家買うんだ俺!」
嬉しそうに笑う海に微笑んで抱きしめた。
「え?なに泣いてんのさ」
くぐもって聞こえる海の優しい声色に、少しうるっときて抱きしめる力を強めるのであった。