黒バス短編

□春への扉
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いつの間にか、寝てしまっていたようで、空には夕日が差していた。

気分転換をしようと決め、俺は部屋を出た。

ちょうどその時、今吉も部屋から出てきた。

「お、諏佐…どっか行くんか?」

「疲れたから、気分転換にな」

「奇遇やなぁ、ワシもやねん」

「…一緒に行くか」

「…せやな」

それから俺と今吉は学校の中をぶらぶらした。

当たり障りの無い会話をしながら。

けれど無意識の内に、俺と今吉の足は体育館の方に向かっていた。

「なぁ今吉…」

「ん?何や諏、佐…」

目の前に体育館が見えて、俺たちはようやくそのことに気が付いた。

「…もう、終わったんになぁ…」

そう言った今吉はどこか遠くを見ていた。

何も言えずにただ、隣に居ることしか出来なかった。

「…っ…くそ…」

小さく、今吉の口から零れた一言。

そして、涙。

「今吉…」

「…勝ちたかった…、なぁ諏佐…ワシは間違ってたんやろか」

「…何言ってるんだよ」

「勝つためだけの、ワシのバスケは…間違ってたんかもしれん」

やめろ。

それ以上、もう言うな。

「なぁ諏佐…、」

「…間違ってなんかねーよ…っ」

「諏佐…」

「良いから、もう何も言うな」

そう言って俺は泣いている今吉の顔が見えないように抱き寄せた。



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