文置き場

□Voice
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血塗られた掌

滴る返り血



―――ケガレタジブン




先生を脅かす存在を消す。
それが自分の中の正義

だから……………
後悔なんて微塵もない



なのに何故…………

俺はこんなに怯えている?





血で汚れ、震える身体を抱き締める


斬るのが怖くて震えるのではない

―――…血に狂う自分が怖い





「―――――っ」

血を求め、いつか“人”で無く只の殺人鬼になりそうで…………






『――――――以蔵……』


ふと耳元で声がする
顔を上げて見回すも、周りには誰もいない

崩れかけた小屋で一人、膝を抱えて怯える俺が居るだけだ



そもそも俺を優しく呼んでくれる奴なんか………いない

先生すら…



「……………誰…か」

俺を必要としてくれ…
誰でもいい………

一言……




“生きていてもいい”

と………………言ってくれ…







『―――…以蔵…………』

『大好き…ずっと…一緒に―――』




血にまみれた刀を抱きながら幼子の様に眠る以蔵に降りかかる、優しく柔らかい声


―――夢でもいい
もっと…………聞きたい。














「おい!お前、何者だ?」

龍馬の願掛けにウンザリしながら付き合っている時に突如現れた、妙な格好をした女に刀を向ける。

「えっ…?あ……あの…」



?!



何だ、この妙な感覚?

初めて合ったはずなのに……どこかで聞いた声

…………いや、気のせいだ

俺が辛うじて“人”として思い止まっている………


あの声の主であるはずが……ない…―――









(了)

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