折原夏輝

□天使の呼び声
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あの時君の願いを叶えてあげられていたら…

君は今でも俺の隣にいてくれただろうか……











【JADE折原夏輝
モデル風美女宅でのお泊まり愛発覚!?】




そんな見出しの週刊誌が出されたのはつい最近で、その雑誌が出てから青葉ちゃんと連絡が取れなくなっていた。




「夏輝、青葉とはまだ連絡が取れないのか?」


「…ああ、ずっと電話もメールもしてるんだけど……
青葉ちゃんの事務所も何も教えてくれないんだ」


「そうか…」




スタジオのラウンジで休憩している時、春に彼女の事を問われ未だ連絡がつかないことを話した。




春も青葉ちゃんの事について彼女の事務所に連絡を入れてくれたみたいだったけど…

プロデューサーでもある春にさえ青葉ちゃんに連絡を繋いでくれることはなかった。


そんな時…


――バンッ!!

「夏輝!!」



ラウンジの扉が勢いよく開くと同時に冬馬が飛び込んでくる。




「なんだよ騒々しいな。大人しく入ってこれないのかよ…」


「バカ!んなこと言ってる場合じゃねえ!
これ見ろよ!青葉ちゃんが無期限で芸能活動を休止するらしいぞ!」


「は?」




突然な話しに冬馬の言っていることが上手く飲み込めず、差し出された雑誌を手に取る。




「それは本当か?冬馬」


「本当みたいだぞ。
今まで青葉ちゃんがレギュラーを務めてた番組も人が入れ替わったらしいし…
青葉ちゃんがしてたCMも、既に別の人で撮りが終わってるって…」




春が冬馬に問いかけた質問に答える秋羅の話は雑誌に書かれてる事と一緒で…
本当に青葉ちゃんは芸能活動を休止するんだとようやく理解出来た…





「夏輝お前、青葉ちゃんにあの記事の事説明しなかったのかよ!」


「なっ!説明しようとしたよ!
でも…電話も出てくれなかったし、メールだって……」


「青葉ちゃんの家に行くことだって出来ただろう!」


「行ったよ!行ったけど、取り次いで貰えなかったんだよ!」


「じゃあ…雑誌が出る前は?
雑誌が出る前までは連絡取れてたんだろ?その時青葉ちゃんに変わった様子はなかったのか?」




責め立てる冬馬に苛立ちながら反論していると、秋羅が落ち着かせるように訊ねてくる。




変わった様子…


雑誌が出た頃は佳境に入ったアルバムのレコーディングが終わりを迎える頃で…




「…アルバムのレコーディングが行き詰まってた頃に何度か青葉ちゃんから会いたいって連絡があったんだ。
でも行き詰まってるから…時間が出来るまで待っててって…」


「それに対して青葉はなんて言っていたんだ?」


「わかったって……でも、なるべく早く会いたいから時間が出来たら連絡してって…」




普段から忙しい俺を気遣ってあまりわがままを言わない青葉ちゃんが珍しく言ったわがまま。




もしかしたらあの時、会いたいと言っていたことが今回の活動休止と関係があるのだろうか…




そう考えてみても答えが見つかるわけもなくて…

とりあえずもう一度春から青葉ちゃんの事務所に問い合わせてみるということで、俺たちは解散することになった。












自宅に帰りもう一度青葉ちゃんに電話を掛けてみるけど、無機質な呼び出し音が鳴るだけで彼女が出る気配もなく留守電に切り替わる。




そしていつもの様に連絡が欲しいとメッセージを残し電話を切った。





青葉ちゃん…
君は今どこにいるの?




会いたい。

会って今すぐ抱きしめたい。




抱きしめて君を傷つけてしまったことを謝らせて欲しい……




そんな事を思いながらいつの間にか眠りに落ちた俺は…
とても不思議な夢を見るのだった……









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