Others
□純心
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キスをしてもらえるまえの涙のわけを、もしも今尋ねられたら…どうすればいい?
そんな思いで夏輝のキスを受け入れながら、そのわけを思い出していた……
ずっと夏輝への想いを抱いていた私は、夏輝に軽く告白なんてしたこともあったけど…
私のことを妹のようにしか思っていなかった夏輝が本気にしてくれることはなく諦めかけていた。
そんな時、ずっと悪かった体調が良くなるどころか悪化していき、訪れた病院で診断された病名は…
ガン…だった。
「ね、夏輝。私ガンなんだって。
結構進行していて……あと半年くらいだって」
入院した私のお見舞いに来てくれた夏輝にそう告げると、始めは信じてくれなかったけど…私の深刻さにそれが本当の事だとわかってくれた。
私はそんな夏輝に死ぬまでの間だけ彼女にしてほしいと…ワガママを言ってしまった。
優しい夏輝が断れないのをわかってて…
そんなの本当の愛なんかじゃないのに…自分で自分を叱りたいくらいのワガママだった。
それでも、夏輝が私だけを見て私だけを好きでいてくれるなら…
私のワガママで夏輝を傷付けてしまうことも、私があと半年しか生きられないなんてことも、どうでも良かった。
そんな事を思いながら病院の中での恋人も終わりを迎えた。
「ね、夏輝。もうそろそろ……私、夏輝の彼女じゃなくなっちゃうみたい……」
そう言うと少し怒った夏輝は、病気が治ったら一緒に出掛けよう…なんて言ってくれたけど……
本当は夏輝が私のことを恋人として好きじゃないって事わかってた…
それでもこの半年間、独り占めさせてくれた優しい夏輝。
そんな夏輝に最期のワガママ…言ってもいい?
ねえ夏輝。私が遠く離れても…ずっと好きでいて……
次の恋人が私に嫉妬するくらいにあなたの中で恋人でいさせて……?
そんなことを願っているなんて…夏輝はわからないよね?
もしも…夏輝が知らない私を知っても、嫌いになったりしないってそっとささやいて…
死んでいくことよりも夏輝に嫌われることがとても怖いの…
願いは叶いますか……?
end.
→あとがき